苦悩の先にあるもの【THE TRUNK BY OBOIST 二周年に寄せて】

THE TRUNK BY OBOIST

「これまでのショップの在り方と異なる形で展開しているのですから、きっといろんなご苦労があると思います。先駆者は大変ですよね。でも、池原さんの健闘や成功に刺激を受けて同じようなお店を持ちたいと思う次の世代が出てくるのではないかと思います。池原さんの経験が多くの人を支えるものとなることを願っています」

これは、T.Shirakashi Bootmakerの白樫徹哉さんからいただいたメッセージです。白樫さんの仰る通り、THE TRUNK BY OBOISTはこれまで(私が知る限り)誰もやったことのない方法で店舗を運営し、もうすぐ2年が経過します。いち服好きの会社員がTTBOを始めるにいたったわけについては今更説明すべくもありませんが、その道のりは覚悟していた以上に過酷で、苦しい思いもたくさんしてきました。もし「あいつに出来るなら俺にもできそうだし、小遣い稼ぎにやってみるか」と考えている誰かがいるとしたら、正直おすすめできません。“これは自分にしかできないことだと思うから”といった理由ではありません、もちろん競合先が増えるからなどといったことでもありません。とにかく大変なんです、本当に。

TTBOを始めた当初よりも、会社での私の立ち位置は高いところにいます。当然これからももっと高みを目指して進んでいこうと思っていますから、今後ますます責任は重くなり、業務量も増えていきます。TTBOのために休みを調整するには、自分自身が有無を言わせぬ成果を出していることが大前提でしたが、今はそれだけでは足らず部下全員の成果を求められます。

当初は長年のブログ読者の方が中心だったTTBOの顧客層はどんどん拡がりを見せていて、特に2年目後半から積極的に実施している日本全国各地でのトランクショーにより、お客様の数もかなり増えてきました。店頭でイベントを開催しても、今では約6割が愛知県外からのご来店です。熱心に応援してくれるお客様が飽きないように、売上利益は先のプロジェクトに向けてどんどん先行投資しています。お金をかけて企画した商品が売れる確証なんてあるわけもなく、ただただ自分が好きで欲しくてたまらないものを、様々な職人の協力を得て作り続けています。本当はもっとやりたいことがたくさんありますが、いっぺんには実現できないので「ひとつ上手くいったらまたひとつ」と一歩以上先の未来を見ないようにして前進してきました。

職人を呼んでトランクショーを開けば勝手に人が来るというわけでもありません。同時開催イベントのバランスを考えて、刺さりそうなお客様へ個別にアプローチをかけて、別の目的でご来店されたお客様に思わぬ商品を紹介して。営業職で長年培った商談の駆け引きが活きていると感じる場面も多くあります。「想像よりも予約が入らない・・・」というときは、胃のあたりが重たく感じます。イベントが上手くいかない場合、困るのは私だけではないのです。ものづくりの手を止めて、体力を使って私の店まで移動して、旅費交通費をかけてトランクショーを開催してくれた職人が一番困るのです。幸い、お客様のご協力と強運が味方して、ここまでの2年間で全然売れなかったイベントというのはほとんどありませんでした。職人も「TTBOでやらせてもらえてよかった」と言って、お金の面だけではなく職人同士の交流などからも、栄養を付けてアトリエへと帰っていきます。

TTBO以前の自分が100のパワーで仕事してきたしたら、今は会社とTTBOの総量で170のパワーで動き続けているイメージです。その割合は時期によっても変わりますが、肝心なのはどんなに頑張っても200にはならないということです。手も足もなかなか3本目が生えてこないし、身体を分離して別働出来る能力も今のところまだありません。とはいえ会社のほうで調子が下がると「あいつは副業して稼いでるから、手を抜いている」とよく知らない会ったこともない人から揶揄されます。私の会社での仕事は土日が勝負時ですが、どうやっても毎月1~2日はTTBOでイベントを開くために休まなくてはならないし、平日もTTBOの個別対応や出張などに合わせてシフトを調整しているので、タイミングが合わずにチャンスを逃すこともあります。なにくそと思ってバリバリ会社で働いていると、あっという間にTTBOのトランクショーが迫ってきて、集客やイベント告知が後手にまわってしまうこともしばしば。そんなシーソーゲームのような毎日を繰り返していたら、2年が経っていたというわけです。

いかがでしょうか、想像してみていただきたい。これが多少の年収アップに見合った業務量でしょうか? ただ金が稼ぎたいのであれば、私だったらもっと別の方法を取ります。そもそも会社員としての給料に特別不満があるわけでもないので、副業などせず今まで通りたまにブログを書いて個人的なオーダーを楽しんでいたほうがよっぽど良いでしょう。

ではなぜ?なぜ続けている? 答えはシンプルで、「人の役に立ちたいから」これに尽きます。

職人が困っていたら、私も一緒に考えて、内容によっては一緒に解決したい。何か失敗やトラブルがあったら、矢面に立つのは私の仕事で、職人は手を動かしていてほしい。イベントで一緒になった職人同士は良い刺激を与え合って切磋琢磨してほしいし、私のいないところで飯にでも行ってTTBO遠いよねなどと愚痴のひとつでも一緒にこぼせば良い。

そんな気持ちで向き合っていると、職人からも「池原さんのためなら頑張りたい」と言われたりする。私は嬉しくなって、この人のためにもっと何か出来ることがないかとまた考える。良心の連鎖。気持ちよく仕事してもらうと、作品が進化する。職人の評価がまた上がる、売れて、生活が豊かになる。その職人に憧れる若者が現れる、次の世代へと繋がっていく。

私の周りだけでもそんな世界になったら、素敵ではありませんか? その実現のためであれば、多少の苦労は喜んで請け負おうと思うことが出来るのです。綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、私は不可能ではないと思っています。

特別な思いを込めてオープンした自分の店が、2周年を迎えます。特別なメンバーと、特別な気持ちで店頭に立つと決めています。まだ来たことがない方も、ご常連様も、何なら今回イベントとは関係のない職人さんも、みんな来ればいい。5月3日と5月4日、みんな一緒に素敵な二日間にしましょう。

二周年イベントのご予約はこちら
https://tol-app.jp/s/thetrunkbyoboist

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