最後のFugee

Leather goods

馴染みのフォロワーさんから「KEIICHIRO FUKUSHIMAのバッグがオーダーしたいから同行して欲しい」というご依頼があり、5月に入ってから三度目の東京。もはや在来線に乗る感覚でふらっと東京へ行くことに慣れてしまっていますが、予定日の二日前になって私の大好きなFugeeのブログが更新されていました。

墨色の濃淡 2
シュリンクレザー黒とグレイのカーフの組み合わせでボストンバッグができました。 色々あるシュリンクの中でもぽってりとした柔らかさを持った 質感がなんともいえない革で 、以前気に入って手に入れておいたものです。 艶を抑えたグレイのカーフ型押しとの組み合わせは色っぽいという第一印象です...

BarbaroleのビスポークシューズやJ.M.Westonのローファー、最近ではWhenの小林さんに作ってもらったオペラパンプスまで、私はブラックのスエードに同色異素材をコンビにした靴が大好き。モードな雰囲気の中にスエードの柔らかさが同居し、ほんのひと匙のカジュアルさが生まれるこの組み合わせで、是非バッグもお願いしたいと徳島のghoeに相談した結果、最終的にエレファントになってしまったのは既報の通り。そんな中、東京へ行く直前にアップされたFugeeの展示サンプルは、まさしく私のために作ったのでは?と思うほどに好みのど真ん中で、同行者の了解を取る前にすぐさま藤井さんに連絡をして、見せてもらうことになっていました。

私も気がつけば色々なバッグを持っていますが、結局毎日仕事に使っているのはFugeeのFM42です。手に取る度にこの鞄の魅力に惚れ直しています。今朝は里帰り前に、軽くメンテナンスをしてから向かいました。

バックルは、鋳造の真鍮無垢でしか現れないという藤井さんの言葉を借りれば“結晶”が美しく光ります。雨の日も関係なくこの鞄を中心に生活しているので、よく見れば雨跡がついている箇所もありますが、使い込むほどに魅力は増す一方です。

実は口枠の両端についている部品が時々取れそうになってしまうことがあって、訪問アポの連絡の際に藤井さんに相談してあったのですが、藤井さんからは「即刻対応させていただきます」と力強い返事をもらっていました。その言葉通り、藤井さんは予め修理に必要になるであろうバッグの部品を新しく製作しておいてくれて、私がアトリエに着くや否や「ごめんなさいね、ちょっと診せてもらえますか」と、中身を取り出してからバッグを持って別室へ。トントンカンカンと藤井さんが作業してくれている音が聞こえてきます。15分ほど金原さんと談笑している間に、完璧に直ったバッグを戻してくれました。開閉時にネジが緩むのを防止するために、最後に頭を潰しているそうなのですが、その点が少し甘かったのかもしれないということです。外側の包み革のパーツも金属の部品も、全て準備しておいてくれた新品に替えてくれました。タフに使っているのでそういうところが少しずつ磨耗していくでしょうしこういうこともあって当然だと私は思っていたのですが、藤井さんはそれすら自分の仕事として許せないようで、悔しそうに「もう少しこういうふうにしておいたら良かったかなあ」「万が一何か次あっても、すぐに言ってくれればいいから!」と仰るので、逆にこちらも安心してしまいました。自分の生み出した作品に対して徹底的に責任を持つ姿勢、職人として格好良いですよね。

こちらの小さなサイズの口枠鞄は「格好良いスーツを着た紳士に、身の回り品を入れて持ち歩いて欲しい」という藤井さんの美学が凝縮されたビスポーク品。もうすぐ納品予定とのことですが、あまりに美しいので写真を撮らせていただきました。

実はKEIICHIRO FUKUSHIMAに同行したフォロワーさんは、既にFugeeでもビスポークバッグをオーダー中。さらに私の親友・汗だくさんもFugeeのビスポーク納品を待っているところなのですが、二人とも棒屋根鞄をチャリ革でお願いしているのです。まさしく上の写真の鞄のような思想のバッグで、藤井さんの方が前のめりになって「こんなふうに作ったら絶対格好いい!」と力説されるがままにオーダーしたもので、私も自分のことのように2030年の二人の納品が楽しみなのです。金原さんが「こちらにしました」と持ってきてくれた棒屋根鞄用のフレームは、まさに同行したフォロワーさんのバッグのために準備してあるアンティークの部品。藤井さんが「こんな汚えの嫌だなんて言われてしまうかもしれませんが、めっちゃくちゃ格好いい鞄になるから、安心してね」と冗談で言っていましたが、限りあるアンティーク品を一人の顧客のために大切に仕舞ってあるところに、なんだか「当事者たちだけの、特別なもの」ということをますます感じられて、ちょっと羨ましくなってしまいました笑

Fugeeではオーダーが入った時にはすぐに使用する革などを確保するため、二人がオーダーしたバッグに使うための復刻チャリ革も既に準備されていました。私が長年使っているオリジナルのチャリ革と比べると少し柔らかい仕上げに変わっているようですが「ひっくり返して作るような製法の鞄だと、このくらいのかたさが限界かもしれないねえ」と革を触りながら藤井さんも仰っていました。

さあ、そしてこちらが私が一目惚れしてしまったブラックスエードの小ぶりなボストンバッグMK42です。私の中ではFugeeが黒いスエードのバッグを作ることは珍しいイメージだったのですが、なんと珍しいどころか、黒いスエードの革を買うこと自体が初めてだったそう。というより、もう一回り大きいMK44に使用したペリンガーの今はなきソフトスノーカーフの裏面が、一枚だけドキっとしてしまうほどに美しく、贅沢にもスエード面をバッグの表に使って作ってみたとのことでした(もはや私のため?)。金原さん曰く「逆に今までドキッとする黒のスエードに出会うことがなかったわけなので、普通にオーダーするよりも良いものになる可能性は高いですよね」とのこと。オーダー品は基本的には買い手側が欲しい革・仕様を選んで作っていただくわけですが、展示品はFugee側が作りたい!と思ったものが手に入るという別の良さがありますよね。

こちらがそのソフトスノーカーフを使ったMK44。二泊三日の旅行にちょうど良いサイズ感でしたが、せっかくなら旅行時以外も使えるサイズ感の方が良い。それに最近旅行や出張の際にも、全日程通して同じスーツと後はシャツなど嵩張らない荷物にしてしまうことが多いので、それほど大きさは求めていませんでした。

手に持つとこんな感じ。横幅は普段使っているFM42と同じく42cmですが、マチ幅が広いので荷物はたっぷり入ります。もともとこのモデルは、生前Fugeeのご常連様だった俳優の三國連太郎さんが「もう歳をとってきたから、羽のように軽いバッグを作って欲しい」というビスポークのオーダーから誕生したものだそうです。元々は使用する芯材も最低限にして、内張も布を使用して極力軽い仕立てでお作りしたところ「こればかり使っているよ」と三國さんが仰るほど気に入っていただけたそうです。

改良を重ねて定番モデルとなった今では、当時とは違い自立するようにある程度しっかり芯材も用いながら作っているとのこと。私の(私の言っちゃってる)スエードの個体はライニングがチャコールグレーのゴートですが、この辺りの作り方も1年ほど前にさらに改良が施されているそうで、パイピングで縫い合わせる製法に変えたことで、若干の型崩れ防止に寄与しているとのことでした。以前のブログにも書いたことですが、定番モデルと言えど毎回の試行錯誤を怠らず「今できる全力を注ぐ」というFugeeの仕事っぷりにはつくづく頭が下がります。自分が恥ずかしくなる。。。笑

嬉しいのは、この鞄にコンビであしらわれているのは私の名刺入れと同じデッドストックのオリジナルチャリ革であるという点。「あまり負荷のかかる部分ではないから、これはオリジナルを使った」ということでしたが、昔のチャリ革ならではのゴジラの皮膚のような表面感が個人的に非常に好きなのです。

金原さんが「ぜひ靴と合わせてみてください」と提案してくれたので、言うまでもなくこのバッグに合わせてみたくてこの日履いてきたBarbaroleの靴を並べてみました。高宮さんにもその場ですぐに写真を送り「いいじゃないですか、めっちゃ合う」と即返信がありました。他のどの靴よりも履いているくらいとにかくお気に入りなのですが、まさかこの靴に合う鞄が、Fugeeで見つかるとは思ってもみませんでした。私の愛が通じたのでしょうか。

現在77歳の鞄職人・藤井幸弘さん。展示品を購入する場合は、MK42の次の展示品が完成する頃までは私の手元には来ません。「だいたい2年以内には」ということだったので、しばらくFugeeのアトリエでお客様のお相手をすることになりますが、5年待った経験のある私からしたら2年なんてあっという間です。今さら言うまでもなく私はFugeeの大ファンで、藤井さんには本当にいつまでも現役でいていただきたいですが、もしかするとFugeeの鞄として私が手にするものはこれが最後かもしれません。定番品の革小物などは毎年夏に製作されていますからまだチャンスはありますが・・・いや、書いていて寂しくなって来てしまいました。まだまだ未来のことは分かりませんから、断定するのはよしておきましょう。

最後は同行してもらったフォロワーさんにカメラを渡して、藤井さんと金原さんと写真を撮ってもらいました。普通なら完成時に撮影するこのような写真も、展示品だとすぐに撮ることが出来て良いですね。正確な納期については追って連絡をいただけることになっていますが、迎えに来るときの自分がもっともっと良い人間に成長していられるよう、Fugeeのモノづくりのように努力を惜しまず日々実直に生きていきたいと思います。お二人とも、お忙しいところお時間を割いていただきまして、ありがとうございました。受け取りの日を心より楽しみにしております。

コメント

タイトルとURLをコピーしました