T.SHIRAKASHI BOOTMAKER “Felix”

Shoes

相変わらず月に一度程度、何かしらの用事が出来てしまって東京への出張が続いているのですが、今回は私にとって特別な内容でしたのでブログに残しておこうと思います。今回は月・火と東京で一泊し火曜日の夜には大阪へ移動、水曜日から大阪のDECOでトランクショーというハードスケジュール。いつも通り三河安城を7時発の新幹線こだまに乗り込みます。本業で出張の少ない私にとっては、TTBOを始める前は新幹線に乗れるだけでワクワクしたものですが、今ではだいぶ慣れ親しんだものになってきました。

そもそも、こんな風に毎回足を運ばなくとも今の時代オンラインでのミーティングや電話で済む内容も多いんですけどね。昔人間なのか、なんだかそれでは味気ないような気がして。直接人と会って、手で触れて、初めて分かることがあると信じているのです。ただイベントに向けて職人さんを呼んで、日程を告知すればお客様が勝手に頼みに来てくれるなんて、甘い世界ではありません。私が自分で試して心から良いと思ったモノ、そしてそれを生み出す素晴らしい職人の人柄を、伝える場でなくてはならないのです。TTBOをただのオーダーサロン、セレクトショップにしないためにも。

まず向かったのは、横浜のインペリアルビルです。ここに来たということは、あの人に会うということ。とにかくお忙しそうなので、私も気軽に来るわけにはいかずお会いするのも久しぶりです。

T.SHIRAKASHI BOOTMAKERの白樫徹哉さん。2024年10月にTTBOでイベントを開催してから、早いもので1年4ヶ月ですか。時の経過というのはあっという間です。アトリエが同じインペリアルビル内の別の部屋へ移転されたところで、まだ什器など一部揃っていないものもありお引越しの途中とのこと。以前より少し広い部屋になっていました。職人の矜持を湛えた静かで力強い眼差し、徹底的な靴。白樫さんにお会いすると、背筋が伸びるようです。

私の自慢のガロッシュブーツは、徳島のトランクショーにも、先日韓国へ妻と旅行した際も履いていきました。最高気温が氷点下のソウルでは文字通り雪だらけでぐしょぐしょになりましたが、シューツリーを入れてしっかり乾かしてからクリームとブラッシングだけでこの通り蘇りました。T.SHIRAKASHI BOOTMAKERほど、道具としての美しさを感じる靴を私は他に知りません。

「クラウンパント、良いですね。私も今日レスカの、これ」と私物の眼鏡を見せてくれました。色といい形といい、TTBO別注で作った12homemadeのクラウンパントと兄弟のようです。

今回私が訪問したのは、白樫さん渾身のMTM新モデルであるボタンブーツを見せていただくためでした。以前から「ボタンブーツを作りたい」と仰っていたのは知っていましたが、シューレースの靴ですら面倒臭がってスリッポンタイプ全盛のこの時代に、果たして需要があるのだろうかということもありなかなか実現しなかったそう。しかし、とあるお客様が「白樫さんの一番作りたい形で」とボタンブーツをオーダーしたことがきっかけで企画が動き出したというわけです。

「貴族や上流階級の人たちが実際にボタンブーツをよく履いていた1930年代頃と変わらぬ作りで、現代にボタンブーツを復活させたかったのです。ただし、懐古主義一辺倒な装いではなく、あくまで今のファッションスタイル・・・ジーンズやカーゴパンツなど、自由に合わせていただきたいと思っています」と白樫さん。この企画は特に、一切の妥協をしたくなかったということで、履き口に押された刻印もこのために新しく作ったタイプ。アトリエの目の前の道路は昔「水町通り」と呼ばれており、文字通り水が売られていたそう。「英国の靴ってよく、〇〇ストリートってブランド名と一緒に入っていたりするじゃないですか。だから今回“WATER ST”と入れようと思って」と白樫さんが教えてくれました。

ボタンブーツを履くには、こういったボタンフックを使います。アンティーク品が1万円以下でたくさん流通しているため、このブーツをオーダーされた方は納品までの間に自分好みのものを探すのも良いかもしれませんね。革が馴染んでこれば、ボタンフライのジーンズを脱ぐ時のようにボボボっと外しやすくなり、履くのもシューレースのブーツより早くできるようになるということでした。出先でボタンフックをなくしたら絶望ですが、それさえ気をつければそんなに敷居、高くないですね。

無論、装着されるボタンについても白樫さんの拘りが詰まっています。厚みのあるプラ製で特注したこちら、水牛やナットなどではボタンフックを使用した際に割れてしまうそうです。「最初に作ったロットがこっちで・・・」と試作段階のものも見せていただきました。ボタンなどは少量では特注など受けてもらえませんから、どっさりと。やりたくても現実的なことを考えると普通はなかなかそこまで出来ないことです。「今回はもう、とにかく僕が好きな仕様を、一切妥協せずに実現したかったんです笑」と白樫さん笑っておられましたが、その笑顔の奥にはクオリティを徹底的に追求する鬼が潜んでいるのだと思うと、少し恐くなるほどです。

シューツリーに関しても抜かりなく、今回の企画用に新たに4ピース版の特注品を作ったそうです。製品代に含まれている通常のスプリングライン社製のシューツリーでも十分ですが、4ピース版は前部が斜めに折れる仕様になっており、より使いやすくなっているということ。昔の乗馬ブーツ用などのツリーはこのような仕様になっているそうです。MTO用のラストを元に開発してあるため、こちらはビスポークでは逆に対応が出来ません。アップチャージにはなりますが「白樫さんの拘りを存分に味わいたい!」という私と同じようなタイプの人にはまさしく必需品となるのではないでしょうか。

「次に白樫さんにお願いするなら、ブラックのブーツと決めていたんです」と私が話すと、白樫さんから「オボイストさんは相変わらず“持って”いますね・・・黒でしたら、ちょうど1枚だけ最高の革がありますよ、幻のポラリスです」と見せていただいたこちらのブラックカーフ。某一流メゾンがそのほとんどを買い占めているため市場に流通することは滅多にないようで、白樫さんがBarbaroleの高宮さんらに「イタリア行った時に探してきて欲しい」などと依頼しても特にブラックは全く見つからないそうです。今回運良く手に入ったタイミングで、私がアトリエに来たというわけ。1足目のガロッシュブーツの時もそうでしたが、なんでこう私って運が良いのでしょうか。「刃を入れると、フロイデンベルグなどと同じでスッと引っ掛かることなく切れるんですよ。良い革の証拠です」と熱弁する白樫さんの解説を聞いていたら、他の選択肢を検討するまでもなくこのポラリスに決定です。

そうこうしているうちに、外注先から1足目のボタンブーツサンプルが到着。私が到着した時にはまだサンプルがなかったので「今日は見れないかな」と思っていたのですが、またしても最高のタイミングで・・・持ってる男、オボイストです。白樫さんですら初めてご対面するサンプル、一緒にヤマトのダンボールを開けて行くと・・・「おお、良いですねえ。良いんじゃないですか」とご本人もご満悦。

ボタンブーツというモデルの性質上、くるぶし周りには手揉みしたキッドレザーorスエードを推奨しているとのこと。白樫さんは特にこの英国から取り寄せたキッドの表情に惚れ込んでいて、私も白樫さんに倣ってブラックカーフ×手揉みキッドレザーの同色位素材コンビでお願いすることにしました。ちなみにこちらのサンプルは事前に手揉みをせずに作っているそうで大きめの皺が入っていますが、製品版では改良されるということ。

すると白樫さんが「これオボイストさんのサイズだから、良ければ試着してみてください」と出来立てほやほやのサンプルを履かせていただけることに。木型を抜いて、インソールの釘を処理して、左足を試着させていただきました。

例のアンティークのシルバー製ボタンフックを使って、白樫さんが私の足へ履かせてくれます。見てください、この格好良さ。流石に格好良すぎませんか? ちなみにモデル名は“フェリックス”というようです。黒猫のキャラクターが想起されますので、ブラックブーツのイメージとピッタリ。

トラウザーズの裾から見える端正な顔立ちが堪りません。鏡越し、第三者目線で見ると造形の美しさが際立ちます。こんなの履いている人を街で見かけたら、ナンパ未経験の私でも流石に声をかけざるを得ない。納品後の今年の冬には、たくさんの方から私もナンパされるかもしれません。

ガロッシュブーツと同じ木型ですから、私の足にバッチリ合うことは既に実証済み。安心感のあるトゥボリュームと、履き口に向けて足首に吸い付くようなくびれのある形状。ボタンのサイズも小ぶりでありながら厚みがあって最高のバランス、流石白樫さんが「1mm単位でこだわった」というだけあります。

白樫さん拘りの4ピースシューツリーを入れた状態。実際にはシューツリーに真鍮製のリングやブランドネームのプレートが装着されます。360°どこから眺めても格好良い。これを見ながらTTBOでウィスキーやワインを飲んだら、最高に美味いだろうな。このサンプルと同じく、履き口のプルはブラックで、ライニングについてもナチュラルでお願いしました。最初はパープルにしようと思っていたのだけど、ボタンブーツのデザインだけで十分過ぎる個性を放っているので、余計な装飾は削ぎ落とした方がディテールが際立つかなと思いまして。こちらもアップチャージにはなりますが、絶対に後悔したくなかったので1足目と同じフルハンドでオーダーです。

T.SHIRAKASHI BOOTMAKERの第二回目となるTTBOトランクショーは、3月22日〜3月23日に開催が決定しました。詳細は後日発表しますが、事前にご常連のお客様に案内してあることもあり、残りの予約枠は少量となる見込み。その人気ゆえに納期もひっ迫する中、今後いつ開催出来るのかは分からない特別なイベントになります。ご検討のお客様におかれましては、予約サイトがオープンしましたらなるべく早くご予約いただけましたら幸いです。

この後白樫さんたちとランチへ行ったのですが、ランチ以降の話題と「オボイストの隣にいるもう一人の男性は一体誰?」といったご説明については次の記事でご紹介します。

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