私が履いている約20足の革靴ですが、中でも別格と思えるのはやはりボレロのビスポークです。どの靴も気に入っていますが、ボレロの3足だけは磨いていても履いていても美しさが段違いです。
Sewnとのオボイストモデル以降、自分が試してみたいと思っていたアイデアはコラボとして実現することが出来るようになりました。一方ボレロはジョッパーブーツ、ストレートチップ、レイジーマンに続く靴のイメージがなかなか湧いて来なくて少し間が空いてしまいました。
そんな中、靴として仕立てるのにとても気になる素材が出てきて、さらにそれは他の誰でもない渡邊さんに仕立てていただくからこそ輝く素材であるとの確信が自分の中で持てたことから、いよいよ4足目をお願いすることとなりました。
選んだのはスエードで有名なチャールズ・F・ステッド社のDoeskin(鹿革)です。主にスエード面を使用することを想定して牝鹿皮から作られた革ですが、注目したのは床面ではなく銀面革。日本の代理店が「これなら銀面でも使える」と判断したものを厳選して販売しており、さらには渡邊さんの神経質と言っても過言ではない厳しい目で靴に使うのに最適な部位を使用します。
とはいえ、鹿は牛と比べても自然の傷が多く、色もカーフほど均一ではなく若干のムラなどがあるため、渡邊さんからは「イメージと違うといけないので、他の革も含めてもう一度検討しましょう」と提案されていました。
今回お願いしたのは5アイレットのプレーントゥです。何の変哲もない普通の外羽根プレーントゥを、ボレロのテイストで仕上げることが最高の贅沢と考えました。また、外羽根は案外開き具合などを突き詰めると作るのに難しい点も多いそうで、既製品ではなかなか実現することが難しい絶妙な加減に調整してもらおうと思います。
スエードや型押しカーフなどその他の選択肢もよく考えましたが、最初にイメージしていた雰囲気はやはりこのドスキンでしか作れないと感じ、初志貫徹でそのまま行くことに。傷や色ムラがあったとしても、ちょっとだけ粗野な雰囲気が逆に気張らず自然体で良いじゃないと。
生成りのステッチも通常なら仕上げ磨きの際にクリームの色で染まるのですが、手作り感が増してこのままの感じがとても好きでしたので、完成品も素のままにしていただくことに。
横から見た時にはソールをいつもよりも若干薄く仕立てていただくことで全体の雰囲気を作ります。ロングウィングなども考えましたが、最もベーシックなこの形状で。つい主張したくなる大人げないいつもの自分を抑え、我慢し、抑制的にオーダーすることで新たな境地に達することが出来るのではと期待しています。
柔らかい鹿革、羽根に僅かな歪みなどが出ないように渡邊さんが慎重にフィッティングを。
今回はラストについても結構修正する点が多いそうで、新しいフィッティングにも非常に期待しています。レイジーマンあたりでほぼ文句のないラストが完成したと思っていましたが、どこまでも改善を試みてくれる姿勢が嬉しいです。
尚、この決して万人向けとは言えないDoeskinを使って作る外羽根プレーントゥ、なかなか他では見ることの出来ない代物かと思いますので、私の靴が完成してから一定期間ボレロのアトリエで展示することを考えています。ボレロの過去作品を探しても5アイレットの外羽根プレーントゥは案外ひとつも見つからなかったので、参考になるかもしれません。「ボレロのアトリエ、一回見学に行ってみたいけど敷居が高い・・・」という方も“オボイストのブログを見て”と渡邊さんに連絡いただければ分かるようになっています。展示期間など、靴の完成時にこちらでまた告知させていただきます。
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