柚月 裕子『盤上の向日葵』

柚月 裕子『盤上の向日葵』

盤上の向日葵
クリエーター情報なし
中央公論新社

発売日:2017年8月21日
形態:単行本
ページ数:560
オススメ度★★★★☆

第二回は初めましての女性作家・柚月 裕子さんの一冊『盤上の向日葵』

物語は将棋のタイトル戦、稀代の天才棋士・壬生と実業家出身の異端児・上条の対戦から始まります。その会場に向かうのは変わり者ではあるが腕は一級の刑事・石破とプロ棋士を目指していた経歴を持つ新米刑事の佐野の二人。埼玉県の山中で発見された白骨化した死体に上条が関与している疑いがあり、ストーリーは上条の生い立ちまで遡って展開されていきます。

家庭内の問題で辛い人生を歩んでゆく上条が唯一の楽しみとして将棋と出会う展開は読み応えがあります。将棋好きで愛情深く上条に接してくれる唐沢や、伝説的な強さを誇る真剣師・東明との出会いで上条の人生が変化していくさまも読者を飽きさせません。

結局、大人になって実業家としても棋士としても成功した上条の心には幼い頃から続く不幸な境遇などのせいで暗い影が潜んでいて、最後まで救いのない展開となっていくわけですが、せめて将棋を通して上条に深い情愛を与えてくれ、実の息子のように大切にしてくれた唐沢夫妻との思い出が、成長した上条に良い意味でもっと影響を与えてくれているものだと信じて読み進めていたので・・・最後は少し、残念でした。後半の展開が少々強引で丁寧さを欠く印象で全体としては非常に面白かった為、惜しいと感じました。

藤井プロによる将棋ブームが続く今、私も幼い頃祖父とよく将棋を指していたこともあって、時々懐かしい思い出に浸りながら読み切ることが出来ました。というわけで、まずまずオススメの良書です、是非。

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