SusieSvelt×Oboist 20 納品編

SusieSvelt×Oboist

ついにこの時がやってきました。SusieSvelt×Oboistの一つの区切りとなるタイミング、オボイスト用Oboist Briefcase納品の日です。昨年7月にスタートした企画ですから、実に10ヶ月を要したことになります。待っている間のドキドキ感といったらなかったです、ステッチの色はベージュで良かったかな?とか、1室タイプのマチのビジュアルは綺麗にまとまるかな?とか、パンパンに張った鞄を私が求めるあまりガチガチになってしまっていないか、などなど。前回のビスポークバッグ完成の瞬間もそうでしたが、鈴木さんはそういった私の不安が全て消し飛ぶような、完璧なバッグを仕立ててくれました。私の中の「世界一美しいラウンドボトムブリーフケース」が更新された瞬間。

「最初に完成品を見るのはどうしてもオボイストさんであって欲しい」と鈴木さんが仰ってくれたので、完成連絡から取りに行く今日までの数日間、Instagramに完成したことを報告する投稿はしませんでした。もちろん鈴木さんから写真ももらっていませんでしたので、完成した姿を見たのは今日が初めて。息を呑むような魂の宿る鞄がそこにありました。これが私とSusieSveltのコラボレーションで生まれた“Oboist Briefcase”です。

前回とは異なる1室タイプのラウンドボトムブリーフケース、全体の強い張り出し感、全てが想像の遥か上をいく仕上がり。見てくださいこの美しい横顔を。ダークグリーン・トープ・ブラックの3色展開ですが、個人的にはこのダークグリーンにして本当に良かったと思っています。深みのある良いグリーンです。

自分のバッグなのに恐れ多くてなかなか触れることすら出来ません。上から見るとこんな感じ。こだわりにこだわったハンドル周りの緊張感がたまりません。付け根の三角のステッチは5連の目打ちをこの部分を作るために加工した4連目打ちで。強いエッジ感がよりグラマラスでエレガント。

フラップ部には今回バッグの補強材として採用したカーボンや私が提供した銀付きのままの栃木レザーなどが仕込まれています。ロックを解除すると前作とは全く異なるフラップの跳ね上がり。

タッセルは試作品を何度も作り直してたどり着いたこのサイズ感・そしてストラップの長さ。以前「商品版」として紹介したものをさらにブラッシュアップし、少し細くコンパクトに。両面張り仕様は変わらずですが、内側の革を若干短くすることで羽根が内向きに集まるような工夫を施してあります。経年によりすぐに開いてしまうのがいわゆる一般的なタッセルですが、あり得ないくらい時間と手間がかかっています。

後胴のフラップが曲がり始める部分にご注目ください。フィッシングバッグなどで取り入れられる仕様のようですが、前胴側と比べると高さがあり、フラップに合わせて少し折り込まれるようになっています。雨などの侵入を防ぐ効果と同時に、開いた際にマチへのフラップ荷重を逃すための工夫です。

マチのボトム部の絞り方については、今後のスージースヴェルトの代表的手法にもなってきそうな、スキンステッチ絞りです。エドワードグリーンのドーヴァーなど靴では有名な技術ですが、鞄のこの部分に採用されるとは聞いたことがありません。表にステッチが全く見えないように縫う高度な職人技。引き算の美学とはまさにこのこと。

マチ部分のステッチを見てください、一枚目が表から、二枚目が裏から撮った写真です。

通常表から目打ちで穴を開けて縫うと、表側は“ノ”の字のいわゆる手縫いの証となる見た目になりますが、裏側は革の厚みによって若干の揺らぎが生まれるのが普通です。しかしスージースヴェルトでは今回両菱目縫いと名付けた手法をとり、表からも裏からも目打ちで穴を開けてから縫う方法を編み出しました。それによって裏から見てもノの字ステッチを真っ直ぐ縫うことが可能になります。表と裏に300余ある穴の数を合わせる必要もありますし、大変手間のかかる製法ですが、マチの部分は特に裏からのステッチもよく見える部分ですので、鈴木さんが美しさにこだわり尽くし考えに考えた結果です。

内装を見ていきましょう。内側の付属品は前回ご紹介しましたとおり、スマホポケットエラスティックペンホルダーリムーバブルフック隠しAir Tagポケットの4つです。当初予定していたブートニエールを付ける仕掛けについては企画を進めるうちに廃案になりましたが、とんでもなくスタイリッシュで機能的な内装になっています。ちなみに手縫いをご選択の方の分は、内装についても全てが手縫いで付けられています。

まずはスマホポケット。私のiPhone11proにはT.MBHのスマホカバーが装着されていますが、このように収まります。表面にはOboist Briefcase専用の刻印が素押しされています。写真2枚目を見ていただくと分かる通り、正面から見て左側のタブがマグネットになっておりL字型に開くことによって、バッグを片手で支えた状態でも取り出しやすくなっています。タブ自体は上の写真のように外側から押さえても、下の写真1枚目のように内側に入れても使うことが出来ます。

尚、私は11proですがiPhone MAXシリーズのように大きなサイズのスマホをお使いの方もいらっしゃるかと思うので、通常サイズかMAX用サイズかは個別にご連絡し選択できるようにします。バッグ製作に入る段階で鈴木さんから連絡がいく手筈になっております。

真上からはほとんど見えませんが、隠された位置にはApple Air Tag専用のポケットが三日月型に装着されています。悪意を持った盗難に対してAir Tagが見えやすいところにあるのでは十分に効果を発揮出来ませんので、このような分かりにくい位置への配置となっています。

スマホポケットサイドに装着されたエラスティックペンホルダー。スキンステッチやエラスティックなど、靴の手法としてよく聞かれるような仕様を各所に見つけることが出来ます。レイジーマンと同じ手法で、革を縫い付けたエラスティック、このようにペンを挿した状態でも美しさが損なわれません。

スマホポケットの横にはリムーバブルフックが。こちらも名前の通りマグネット式で、取り外しが可能になっています。私は車の鍵などをつけて使おうと思っています。少しコンビニで買い物したりするときに、スマートキーを持ち運ぶのに便利です。

アトリエ内で手に持った様子。バッグの重量は1.3~1.4kgで前回の2室タイプよりも軽い仕上がりですが、3割増しという張りの強さで所有欲がグッと満たされます。裏側まで肉盛りした手縫いのハンドルはとても持ちやすくバッグの重量を感じさせません。

新しい一歩を祝福してくれるかのような春の穏やかな天気でしたので、鈴木さんとバッグを持って散歩。外で見るとより鮮やかなグリーンが際立ちます。使っていくうちに、少しずつ濃く、鈍い艶が出てくることと思います。経年変化が楽しみ。上部・下部に張りのある丸みが見て取れますが、中に荷物を入れて使い込み、革がほぐれていくうちに少しずつスリムな形に変化していくことを想定しています。といっても、かなりの張り感ですので何年も使い続けてようやく変わってくるくらいかと思いますが。

鈴木さんはこのバッグの完成品をご自身で一目見て「世界一handsomeなバッグだ」と感じたそうですが、全く同感です。

以前も書きましたが、持ち主と接する面積が最も小さいビスポーク品と言えるバッグが、なぜこれほどまでに感動を呼ぶのでしょうか。私の手のサイズを測り合わせて作ったわけではないのに、間違いなく私のものであると直感的に認識することが出来ます。バッグに込めた様々な想いが、内側から滲み出てくるのかもしれません。

ロケでは鈴木さんも一眼レフで写真を撮っていましたので、今後のSusieSveltの投稿をお楽しみに。

アトリエ近くの純喫茶に入り少し休憩。お客様分はまだこれからですが、初号機を完成させ達観した様子の鈴木さんと色々なことを語り合いました。

傍に座るOboist Briefcase。外の世界で見せるのとはまた全然違う表情で楽しませてくれます。表現力豊かなバッグだ。

バッグに合わせて今日はステファノビジのグリーンのネクタイをしてきました。飛田さんの時計と特注の時計型スクエア錠前、そしてアルモのオボイストシャツ。好きなものしか映っていません。

アトリエに戻ってからは、前作完成時に撮ったのと同じアトリエの壁をバックに鈴木さんの写真を撮りました。正面からの写真だけでも明らかに進化しているのが分かります。鈴木さん自身も引き締まっていますね、断酒し、サーフィンも封印しバッグ作りに没頭してくれた鈴木さん。「出来ること、やりたいことを全て詰め込みました」と言ってくれました。私たちに細かい仕様を任せていただき、いろんな試行錯誤の末に仕様変更を繰り返してきましたが、それを許してくれた9名のオーナーさんたちにも心から感謝しています。

こうして、Oboist Briefcaseの初号機が完成しましたが、物語は続いていきます。001~009のお客様へお届けするまで、引き続き製作の様子を追いかけていきますので、オーナーさん以外の読者の皆様も是非楽しみにしていてください。そして私が今日感じた心の動きを、オーナーさん一人ひとりに連鎖させるまで、SusieSvelt×Oboistの挑戦は続くのです。

納品後の商品説明をIGTVに掲載中。
何故かまたしても画質が良くありませんが、ぜひご覧ください。

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