3月2日にも東京へ行ったばかりですが、昨日も8日ぶりに東京出張でした。TTBOが始まる前は車中心で新幹線に乗る機会なんて極めて限られていましたが、最近は道中に仕事が出来ることもあり新幹線移動にすっかり慣れてきました。

今回はまず、神奈川県のビスポークシューメーカー・Barbaroleの高宮さんのアトリエを訪問しました。お伺いするのは二度目で仮縫いの為でしたが、オーダー時のことをそういえばブログに書いていませんでしたので少し触れておきたいと思います。

昨年10月に、THE TRUNK BY OBOISTではT.Shirakashi Bootmakerのトランクショーを開催しましたが、トランクショーが終わってしばらくしてから「知人の靴職人がトランクショー先を探していて、TTBOのことを話したら“是非”とのことで、今後の候補に入れてあげてもらえませんか。良い靴を作りますよ」と連絡がありました。他でもない白樫さんが“良い靴を作る”と仰っているのだからこれ以上の裏付けはありません。(これまでに履いたあらゆる革靴の中で、白樫さんのMTOブーツは私の中での最高峰に位置しています)

早速Barbaroleの高宮さんに連絡を取り、11月半ばにお伺いしてきました。白樫さんは、高宮さんが雑誌のLASTに掲載された時の写真を送ってくださり「ちゃんと修行していますから、苦労やその道のり、ストーリーがあります」と丁寧に高宮さんのことを紹介してくださりました。こういう繋がりが生まれるのはTTBOならではと言えるかもしれません。今のところ、というか今後も、弊店で取り扱う商品やイベントには、ご紹介などのご縁を何よりも大事にしたいと考えております。もちろん自分自身でまずは買って、試してみて、良いと思えるものに限りますが。(実は今度は高宮さんからも別の分野の職人さんを繋いでいただきまして…それについてはまた今度)

Barbaroleは現時点でビスポークのみの取り扱いになりますので、Instagramで投稿されている過去の作品などを眺めながら、予めどんな靴をお願いしようかある程度イメージを固めてからお伺いしました。チャーミングな髭が特徴的な高宮さん。「ウゴリーニで修業していたので、イタリアの船頭の唄うバルカローレと、髭(バルバ)をもじった造語なんです。ブランド名にもなっているので、もう剃れなくて笑」と屋号に込められた意味を教えてくれました。

私がお願いしたかったのは、ブラックのカーフとスエードの同色異素材コンビシューズです。J.M.WESTON180midnightでローファーを持っているのですが、そのデザインバランスがとても気に入っていて。スエードとカーフのコンビって、少しでも割合を間違えると一気にダサくなる危険な組み合わせだと思っているんですよね。3アイレットのウィングチップダービー、デザイン自体は珍しいものではありませんが、スエードが見える部分の量など、私にしては結構細かく打ち合わせしました。カーフとスエードについては高宮さんのオススメで、ゾンタのゴルダニールカーフと、オペラというタンナーのスエードを採用することに。

TTBOとしてトランクショーを開催したい時期から逆算して、普通より早く仮縫いの準備を進めてくれました。(役得ごめんなさい。。。) 待っている間にInstagramでやり取りする中で、高宮さんがボクシング好きということが分かり意気投合。私も結構好きなので、注目の試合が行われる前後には試合の予想やその後のマッチアップなどについて語り合うこともしばしば。2025年中には一緒に何かのボクシングの試合を見に行こうということになっています。靴と同じくらい楽しみです笑

そんなこんなで、3月。前回は車で伺いましたが、今回は新幹線と電車で。Barbaroleのアトリエがある新百合ヶ丘(神奈川県麻生区)は男女ともに日本一長寿な街だそうです。緑が多く気持ちの良いところで、坂道や階段が多いため普通に生活しているだけでたくさん歩くのが秘訣なのかもしれません。新百合ヶ丘駅からアトリエまで歩いて10分もかかりませんが、街中の長い階段をおりるときには景色が一望出来、透き通ったような気分になります。

アトリエに到着し、ここ数ヶ月の近況報告などを済ませてから、仮縫い靴に足入れです。仮縫いの為、パーフォレーションなど細かなデザインは左足にのみ施されていて、スエードとのコンビではなくカーフのみの仕様です。「親指のあたり、結構攻めてみたんです」と高宮さんがおっしゃる通り、私が普段履いている靴と比べるとポインテッドトゥ気味で格好良い。驚いたのは、ビスポーク1足目の仮縫いとしては、これまでお願いしてきたどのシューメーカーよりも良いフィッティングとデザインバランスだったことです。ただ足に合っているだけでは履きたいと思える格好良い靴にはならないし、かといって足が痛いと敬遠するようになりますから、ビスポークはその両立が肝だと思っています。Barbaroleの靴はそれが非常に高いレベルで実現されており“ファッションも好きだ”という高宮さんのセンスが光る靴だと感じました。

「少し外を歩いてみましょうか」と仮縫い靴のまま散歩してみました。わずかでも気になる部分は高宮さんに報告して、本番靴ではより良いフィット感を目指します。歩行しているところを見るとなんとなくその人の足の特徴なども分かるそうで、高宮さんはずっと私の足を見て隣を歩いていました。

全面カーフで作ってもらった仮縫い靴がとても良かったので、一瞬「スエードのコンビやめてしまおうか」とも考えましたが、経験上迷ったときは最初の感覚を大事にした方が良いことを知っているため、元々の仕様で進めてもらうことにしました。「ご飯行きますよね?」と高宮さんが誘ってくれて、昨日は近くのアジア料理店へ。前回連れて行ってもらったラーメン屋と同じグループのようで、他にも焼き鳥の店もあるそうですが全部美味しいんだって。ガパオとグリーンカレーのセットを頼んで、せっかくだから前菜付きのコースにしました。食べながらも私たちは、映画やボクシングの話題でずっと話しっぱなし。「こういうナリだから、小難しいミニシアター系とか好きそうってたまに言われるんですけど、普通に分かりやすいやつのほうが好きです」と映画の趣味も合って楽しかったです。私も映画自体は好きなのですがあんまり難しいやつは眠くなってしまって笑 この日も小田原から新百合ヶ丘まではラッセルクロウのグラディエーターを観ていました。頼れる男に憧れる系頼りになりそうでならない男です。

まあ笑、そんなわけで、私の一足目のBarbaroleに関しては来月中には完成しそうです。仮縫いの時点で「あ、これは間違いないやつだ」と確信に変わったのでもう告知してしまいますが、TTBO一周年記念イベントの中のひとつはBarbaroleのトランクショーです。正式な案内は後日発表しますが、是非楽しみにしていてください。

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