おかげさまでTHE TRUNK BY OBOISTは間もなく一周年を迎えることが出来ます。月に一度程度しかまともに営業しないという稀有なスタイルで営業を続けてこられたのは、ひとえにご来店くださるお客さまおよびお取引先のご協力あってこそです。この場を借りて深く感謝申し上げます。
この1年の私とTTBOの動きが皆様の目にどのように映っていたかは分かりませんが、実店舗を持って経営していくことがこれほど大変なのかと、身に染みました。私は兼業というスタイルで会社員としてもそれなりに働いていますので何とかなっていますが、洋服屋一本、靴屋一本で生計を立てている世の中の皆さんのことを、無条件に尊敬するようになりました、本当に。私の無力さを周りの方々がカバーしてくれて、何とか1年は持たせることが出来ましたが、これからこの仕事を続けていく上では更なる努力と改善を積み重ねていかねばならないと感じています。お客様におかれましても、何かお気づきの点や希望のサービスやアイテムなどがございましたら、是非お聞かせいただければ幸いです。出来る限り対応させていただきます。
さて、開店一周年を記念いたしまして、5月1日~5月3日はアニバーサリーイベントを開催いたします。既にInstagramでは告知しておりますが、この機会に一人でも多くのお客様にご来店いただきたいためブログではより詳しくご説明いたします。ゴールデンウィーク休暇中でご家族とのお出かけ等お忙しい時期かとはおもいますが、気合を入れて営業しますので何卒よろしくお願い申し上げます。
①Barbarole shoemaker 高宮遼氏トランクショー
2025.5.1 11:00-20:00
2025.5.2 10:00-20:00
2025.5.3 10:00-17:00
以前もブログでご紹介いたしましたが、T.Shirakashi Bootmakerの白樫徹哉さんから「良い靴を作る職人がいるので、TTBOでトランクショーを開催してみてはいかがでしょうか」と紹介いただいたのがBarbaroleの高宮さんでした。ついに私の頼んでいたビスポークシューズが完成いたしましたので、オーダーした内容を詳しくご紹介しながら高宮さんの靴を見ていきましょう。

今日も7時ちょうどの新幹線こだまで、小田原経由の新百合ヶ丘までやってきました。受け取りが楽しみで早起きしていた私は電車の中ではうつらうつら。方向音痴の私でも3回目となると、家からBarbaroleまでの道くらいは迷わず辿り着けるようになってきました。この日はあえてSHINYAのブリーチデニムとブラックリネンのシャツを着てカジュアルに。

高宮さんのアトリエに到着し、しばらく世間話をしてからいよいよ私の靴にご対面。仮縫いの時はコンビではなくカーフで簡易的に作ってもらっていて、その時は少しだけコンビをやめるかも考えたのですが・・・結論、初志貫徹して正解でした。

これが、私がオーダーした初めてのBarbarole。ゴルダニールカーフとオペラスエードの同色異素材で作る3アイレットダービーです。私の足はひとつしかないのに、靴職人によって出来上がってくる靴は全く別物。そして履く人の足は千差万別なのに、誰の靴を作っても「あの職人が作った靴だ」と思えるようなアイデンティティを確立することって、とても難しいことだと思うのです。Barbaroleの靴は、どこから見ても「高宮さんの靴だ」と分かる点がまず私は気に入っています。緊張感漂う芸術性の高いビスポークシューズもまた一興ですが、Barbaroleはふと手に取ってしまうような親しみやすさを覚える靴だと私は感じています。

仮縫い時よりも若干ウィングの山を後ろに下げてもらったのですが、このバランス感。ゴルダニールカーフの“黒さ”もさることながら、オペラのブラックスエードによって漆黒感がより増しています。ウィング横の穴飾りも、作りながらバランスを見て少し延長したとのこと。

ふとソールを見てみると、そこには高宮さんからのサプライズプレゼントが。TTBOのロゴが化粧釘で再現されています。またライニング部にもイタリア語で「TTBO1周年記念」を示す表記が忘れられぬオープン日とともに記されていました。高宮さんは「イタリアで師匠に学んだのは靴作りだけではなくて、こういうところも影響受けているかもしれません。靴作ってる時って、その人のことだけを考えているので、“ぁ、こんなことしたら喜んでくれるんじゃないかな”って思い付いちゃうものなんですよね」と仰ってました。これらは全て、高宮さんの顧客に対しての“愛の具現化”と呼べるでしょう。
ブラックカーフとブラックスエードのコンビネーション、180に続いて2足目となりますが、Barbaroleの一足もさすがのバランスです。少しファッショナブルに履きこなしたくなるような、そんな靴に仕上がっています。「オボイストさんは甲が高くて幅広ですがヒールカップは小さいので、全体的なバランスを取るためにあえてヒールは小さくしませんでした。ここも修行している時によく言われた部分なんですよね、なぜ日本人は捨て寸が長くヒールの小さい女性っぽい靴ばかり好むんだって。」

履く前から興奮が止まらず写真ばかり撮っていましたが、いよいよ足入れです。ライニングにはゴールドでBarbaroleの箔押し。真上から見ても惚れ惚れします。高宮さんと話していたのですが「スーツにもカジュアルにも履ける靴」って、結局のところカジュアル寄りというか、実際にはスーツに合わせると微妙なことが多くて。Barbaroleは真の意味で“どっちでも最高”を達成している稀有な靴だと思います。

「私にとって、靴は必ずしもビスポークじゃなくてもいいや」と最近は思っていたのですが、Barbaroleの靴は心の底から“嗚呼!ビスポークしてよかった!”と思える靴でした。足入れをして、嫌な感覚がひとつもありません。採寸時はサクッと、長大な時間をかけるわけでもない高宮さんでしたが、ストレートに書くと今まで頼んできたどのビスポークシューズよりも快適です。

アノネイのカーフを使った仮縫い靴と並んで記念撮影。羽根の開き具合も理想的です。甲の部分がスエードであることで履き心地も柔らかい。デニムとの相性は見ての通りです。内側だけをべヴェルドウェストにしたことで、どの角度から見ても違う魅力を発見出来ます。
高宮さんも「ブラックコンビ良いですね、作ろうかな」とこの靴を気に入ってくれている様子。私は靴に限らずオーダーしたアイテムを受け取る前に「仕上がり、どうですか?」と聞くようにしています。もちろん「イマイチっすね」なんて返ってきたことはこれまでに一度もありませんが、作り手自身が仕上がりに満足しているかどうかって、反応を見れば大体分かるんですよね。高宮さんとは靴に関係のない内容でも普段からやり取りする仲になっていて、5月半ばには一緒にボクシングの試合を現地観戦する約束もしています。私の普段の投稿を見ながら、どんな靴に仕上がったら喜ぶだろうかと考えながら作ってくれたのだろうと思います。結局、ビスポークの醍醐味ってそこにあるのだろうなと。Whenの小林さんが言っていたんだっけ、ビスポークとMTOの一番の違いは「履く人のことを考える時間の総量だ」と聞いたことを思い出しました。
「新しく仕上がったばかりだ」というBarbaroleの黄色いシューズボックスにはこの日履いてきたSewn shoe-makerのTTBOオボイストモデルを入れて、早速履き下ろしがてら高宮さんとランチ。「ポケットがたくさんついたのが欲しくて」とご友人のシャツ職人であるRYO IKEDAにオーダーした、メゾンエラールのリネンを使ったシャツジャケット。実は私も先日、高宮さんにお繋ぎいただいて池田さんのシャツをオーダーしてきたところです。そちらについてはまた今度。

歩いている時もついつい下を向いて、にやけてしまいます。長年の課題だったブラックコンビの靴はこれにて完結かな。これ以上のものをオーダー出来る気がしない。

珍しく日曜日に伺ったので、新百合ヶ丘駅周辺はマルシェで大変賑わっていて人がたくさん。おすすめの焼き鳥屋へ行こうとしたのですが満席で、別のお店で酸辣湯や焼売を食べてから「写真映えするカフェがあるので行きましょう」と二人で向かいます。田園ぽてとという可愛い名前のお店は、確かにその店内だけが日本離れしていてドラマのロケ地などとしても使われることがあるそうです。
紅茶をオーダーして到着するまでに、店内各所で靴を撮影させていただきました。手前味噌ながら本当に格好良い靴です。シューツリーは3点式のものが付いてきます。もちろん私のラストに合わせた特注品です。

Barbaroleの穴飾りは他の比較すると若干大きめ。ウィングのギザギザもはっきりしています。これで作りが甘いと単にカジュアルな印象に傾いてしまうのですが、細部にわたりしっかり作り込まれているからギャップ萌えしてしまうんですよね〜。

GFX100RFにしてから、さまざまなアスペクト比で撮影する楽しさを覚えてしまって。こちらは石作りの階段で撮影したBarbarole。間違いなく実物の方が格好良い靴筆頭ですが、少しでも魅力が伝わればと色々撮ってみました。

アンティークのテーブルの脚と相性が良い。履き下ろし直後ですが、革が少しほぐれて足と一体化しています。高宮さん、靴磨くのも上手だよな。ちなみに納品時は、お手入れ用にサフィールのクレム1925と真鍮のシューホーンが付いてきます。大事に履いて欲しいという高宮さんの気持ちが伝わってくるようで、ちょっとしたことなんだけど嬉しいですよね。

「奥さまは甘いものは好きですか?」と高宮さんが田園ぽてと名物のスイートポテトを持たせてくれました。普段ならせっかく関東に来たならば色々と予定を詰めて飛び回るのですが、もう今日はこの靴と、高宮さんとの時間に満たされてしまって。駅前のディーン&デルーカでブログの下書きをしばらく書いてから、小田原経由で駅弁を買ってそのまま帰ることにしました。

最後になりますが、このゴールデンウィークはBarbaroleの靴がTTBOで見られる貴重な機会となります。革靴もたくさん買ってきましたが、その中でもトップクラスにお気に入りの一足が出来上がった私からすると、オーダー出来る人は今頼んだ方が絶対に良いです。TTBO関連でかなり無理してでも経験のために買いまくっている私が、自信を持っておすすめいたします。ご予約は下記リンクから(スマホ専用サイトです)承っておりますので、是非お気軽にご来店ください!

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