ジーンズとわたし ①

THE TRUNK BY OBOIST

TTBOSUITとTTBOCOATに続く第3のメインアイテム“TTBO Hollywoodtop Trousers”がいよいよ完成しました。あくまで“Hollywoodtop”なので、デニム生地に限定したモデルではないのですが、ここでは特にデニムトラウザーズについて記していきます。

私にとってジーンズのオーダーを始めることは悲願でありました。私が高校生の頃はちょうどアメリカでプレミアムジーンズという一大ムーブメントが巻き起こっていて、ペーパーデニム&クロスをはじめとした当時の価格でも1本4万円以上するような柔らかい履き心地のジーンズが流行っていました。昔から他人より少し良いものに目が行きがちだった私はアーネストソーンというブランドの高級ジーンズを買って、膝が擦り切れるほど履いていたものです。その後リーバイスの復刻にハマり、やれ47がツウだ、いや男なら55だ、66穿いたら絶対モテるなどと騒いでいた記憶があります。

そうこうしているうちにこのブログでも何度か紹介しているBRUTUS の2010-2011A/W特集のなかで一宮市の大江洋服店が紹介されているのを見て、その時はまだ大学生でオーダーには至らなかったものの憧れに似た想いを募らせ、社会人になった2013年に初めて実際にオーダーしに行ったのを懐かしく思い出します。

ボタンフライのボタンを全部違うものに変えたり、アーネストソーンのデニムで気に入っていたブロンズのトップボタンやオレンジのステッチを踏襲して、66に近いわずかにテーパードした綺麗なシルエットでありながら40年代頃までのジーンズに見られるクロッチリベットを追加したり。ちょうどKOKONの1足目であるバーガンディコードバンの422が完成したのもこの頃であり、その後私は自分好みにカスタマイズする楽しさに目覚めていったのでした。

時は流れ2025年。TTBOでの船出は一般的にいえば出足好調と言っても差し支えない内容でしたが、私は昔の自分が体験してきたジーンズのオーダーをこの場で再現出来ないものだろうかと考え始めました。aldexの岩田さんや小島さんに相談しましたが「スーツ工場では厚いデニム生地は縫えないし、スラックスとジーンズでは根本的に作りが違い、対応出来ないです」と最初はaldexでの生産は諦めていました。その後、岡山県のファクトリー何社か当たってみて、オリジナルでジーンズを作ること自体はそれほど難易度の高いことではなかったのですが、問題は1本ずつ受注生産することが難しい点と、量産する際のロット数。たくさん作れば単価は下げられますが、私の店は在庫を抱えて営業するスタイルではありませんし、かといって量を減らして高い値段で「TTBOのオリジナルのジーパンです」とリリースすることに何の意味がある? 世の中には素晴らしいジーンズが溢れていて、唯一無二のオリジナリティを出すことなどほとんど不可能。そもそも私がやりたいのはそういうことじゃない、お客様のお客様によるお客様のためのジーンズを生み出す楽しさを体感してもらいたいという点が大切なのだ。

そんな中、マルキシの山口さんと生地の打ち合わせをしているときに「面白いバンチがあるんですよ」と見せてもらったのがメゾンエラールのCarnet De Voyageというコレクション。国内に用意できるバンチ数に限りがあり、一時的にお借りする以外はなかなか見られないバンチなのですが、その中でもリネン100%の墨黒デニムに一目ぼれした私は、使い道を決めないままとりあえず自分のトラウザーズ用尺分を購入します。岩田さんに見せて「普通のトラウザーズにするのがもったいなくて使えない」などと言ってジーンズ作ってくれないか探りを入れたりしながら笑、しばらく時間が経ちましたが、aldexのパンツ職人新井さんに写真を送って「この生地、好きに料理してもらえませんか」と相談したときに出てきた言葉が「ハリウッドトップにしたい」というキーワードでした。ここからまたしばらく時間が空いて、内心どうなったかなと気になりながらも「無茶言ってるんだから急かしてはいけない」と必死に連絡を我慢する私。

数か月経過したころ、預けたリネンデニムではなく新井さんが持っていたドラッパーズのチノクロスで作った最初のハリウッドトップサンプルが完成しました。何も聞かされていませんでしたが、新井さんはこっそり私のサイズでこのチノパンを作ってプレゼントしてくれたのです。その後も、真のフルハンド(全部手縫い)で2ndサンプルを例のリネンデニムで仕立ててくれたり、3rdサンプルも新井さんが巻きで持っていた国産デニムを使ってくれたりと、もはや新井さんの方がやりたがっているんじゃないかとすら思える圧倒的な熱量でTTBOハリトラの開発にあたってくれました。

もちろんその裏には岩田さんがいて、さらにはサンプルを作ってくれたaldexの皆さんがいます。特にこの3rdサンプルが出来上がったときはいよいよ「これ、TTBOの理想の“ジーパン”じゃん」とみんな熱にあてられていて、そんな我々を客観視していた小島さんが「じゃあ僕は生地見つけてきますよ」と、製品に使うのにおすすめのデニム生地を色々と教えてくれました。ものの2,3日でいくつもの生地サンプルが届き、仕様も生地も固まってきてあとはサイズゲージの完成を待つのみとなりました。仲の良い汗だくさんにこのあたりの経緯を興奮気味に話したら「せっかくなら共地でジャケット作って喜びを全身で表現しよう」ということにもなりました笑

さてさて、長くなりましたが、とにかく色んな人の思いが詰まったTTBOハリトラがようやく完成しました。次の記事で、ハリトラの細かい仕様についてご紹介していければと思います。(今回の記事はほとんど思い出話で終わってしまったので、写真も懐かしいものを中心に掲載してみました)

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