カフェから10分ほど、炎天下の中を歩いていくと・・・あったあったありましたよ、foggy&sunny!! 憧れのお店は細い路地の中でこぢんまりと佇んでいました。この路地はT.Shirakashi Bootmakerの受注会時には、仮縫いのお客様がフィッティングチェックのために歩きまわるためkinoさんは仮縫いロードと呼んでいました。kinoさんを先頭に扉を引いて入店します。
「ハロハロハロー!!!キノさん!!!ぁ、初めまして〜♩ 散らかっててごめんなさいね、中川ですぅ〜」と想像より130%増しで陽気な中川さんがそこにはいました。中川さんの“キノ”さんのアクセントはアイスのピノと同じ、私はkinoさんをトントントントン“日野”の2tのアクセントで呼んでいたことに今更気づきました。中川さんは思っていたよりも小柄で、襟が片側だけぴょんと立ったラコステのグリーンのポロシャツに股上の深いコーデュロイ(!!!)のハーフパンツ、そしてその愛くるしいキャラクターからまるで少年のような印象を受けました。
中川さんには道中のサービスエリアで明宝のトマトケチャップを買ってきていたので早速お渡し。「わあ、ありがとうございます♩ ちょっと数日、ここ置いとこ」と英国のアンティークシグネットリングやヴィクトリノックスのマルチツールなどが置かれた机に。「フォギーさんのお店にあると、ケチャップもなんだか格好良く馴染みますね」と声をかけると「ははは、まあ、馴染むというか、力技で馴染ませていく〜って感じ」と中川さん。
「今日は、これを、発送しちゃおうかな〜・・・ちょっとだけ待っててくださいね〜」と遠方の方に送る服を、私と同じサイトウアイロンボードの上で梱包していきます。ずっと憧れていた存在の手で包まれていく服たちはどれも特別なものに見えて、紙袋が立てるかさかさと立てる音さえも、数日経ってブログを書いている今でも耳に残っています。後ろのラックにかかっている服はおそらく商品ではなく中川さんの私物、店内を見渡してみてもどれが売り物なのか全然分からないような、まるで中川さんのお部屋に遊びに来たかのような感覚になります。
写真撮影は大丈夫でしょうかと尋ねると「そんなそんな、うちNGとかなんにもないから、ご自由にどうぞ〜♩笑」と簡単にOKをいただきました。真ん中にかかっているオリーブカラーの開襟シャツはレスレストン×フォギサニの別注シャツ。いかにもなサファリシャツにならないようにポケットの形状などを調整してバランスに気をつけたとのこと。
「なんか最近黒にハマってて〜。服とかもこれからちょっとずつ黒着てみようかなって思ってるんです」と語る中川さん私物の極上の靴たち。右からT.Shirakashi Bootmakerのビスポーク、エドワードグリーントップドロワー、HAN shoemaker。窓側のテーブルにはHAN shoemaker×フォギサニのタッセルローファーが並びます。目が覚めるような黒と赤のコントラスト。
T.Shirakashiのダービーは仮縫い靴もディスプレイされていました。イングリッシュグレインと呼ばれる独特な表情の革に、鳩目つきの5アイレットでドレスにもカジュアルにも合わせやすそう。こういうバランスの靴、大好きなので本当に羨ましいです。手にとって間近でトゥの釣り込みなどを見るといかに高いクオリティで製作されているのかが分かります。
トップドロワーのエドワードグリーンはご自身の結婚式に履くために購入されたもので、アッパーはカールフロイデンベルグ。20年程度経っているはずのものですが、そんな風には全く見えないほど美しい状態が保たれています。少し前にfoggy&sunny店内で靴磨きサービスのイベントを開いた際、招聘したHARK KYOTOの寺島さんが磨いてくれたものだそうです。プロの磨きは保ちが違いますよね。
里和さんの作るジャケットもトルソーに着せられていました。富山という土地柄なのか、フォギーさんの提案なのか、多くの方がツイードの素材でジャケットをオーダーされるそうです。肩や胸周りの曲線が大変美しいです。私がFumiya Hiranoでいつも頼んでいることを中川さんは知ってくれていて「あの方、めちゃくちゃ型紙作るのがうまいですよね! 自分のために自分で作ったスーツを、上手く着られるテーラーさんって意外と少ないのですが、ヒラノさんはすごく綺麗で流石だなあといつも見ています」と仰ってました。テーラーとしても友人としても大好きなFumiyaさんを褒めてもらえて、私まで嬉しくなります。
kinoさんが頼んでいたシャツも入荷していて、中川さんは「キノさん!これ!着てみて着てみて〜」と陽気にご案内。foggy&sunnyという店名はイギリスの移り気な空模様のことをいうそうですが、中川さんは常に晴れやか。出来立てほやほやのレスレストンのピンクのボタンダウンシャツを試着し、そのままお持ち帰りです。レギュラーカラーの形状に中川さんのこだわりが詰まっているそうで、フロントをオープンにして羽織りとして着るのも良さそう。
「(店内)暑いよね〜、とりあえずお茶でもいきましょ〜」と、kinoさんが車を出してくれて中川さんのナビゲーションで外出します。私がお邪魔するのを一日勘違いされていた中川さん、「僕おっちょこちょいでね、夕方息子が帰ってきたら床屋にだけ連れて行かなきゃいけなくて〜」と、東京藝大へ一発合格されたご長男のお話などをしながらドライブ。
中川さんが案内してくれたのはPound Houseというケーキ屋さん。店主は中川さんのお客様でもあるようで、昔二人でリヴェラーノ&リヴェラーノなどフィレンツェまで買い物に行ったりもしたことがあるとのことでした。
「まず、最初は、とりあえずこの3つの中から選びましょう。きっと美味しいと言ってもらえるはず」と中川さんが示したのは、イチゴ・桃・メロンのショートケーキでした。桃と迷いましたが、大好きなメロンのショートケーキを私が選ぶと、kinoさんも中川さんも同じものをオーダーし、奥のテーブル席へ向かいます。
kinoさんも買っていたピンクのボタンダウンシャツを羽織った中川さん。肌が本当に綺麗で「なんでそんなに若々しいんですか」と尋ねると、昔化粧品メーカーに勤めていた親戚がニキビの多い10代の中川さんの顔を見て「今からちゃんと手入れしておいた方が絶対いいよ、一生痕が治らなくなるよ」と忠告されたのをきっかけにお肌のメンテナンスに目覚めたそうです。息子さんたちにも同じようにスキンケアについては教えているとのことで、後でお店に戻ってからお会いした二人のご子息も艶々のお肌をしていました。(息子さんたちを車でお店に送ってこられた超綺麗な奥様にも、一瞬でしたがご挨拶できました)
中川さんが持っていたのはひと目見たらすぐに分かる、イルミーチョのカラフルなバッグでした。深谷さんからも様々な相談が中川さんに寄せられるようで、二人の間の強固な信頼関係が伝わってきました。ぱっと見ちょっと強面に見えた店主の作るメロンケーキはとても繊細で優しい味がして、さらりと食べてしまいました。車が大好きな店主はお店の横に大きなガレージを建てられていて、中川さんがオーダーいただいた商品の仮縫いで出張に来られる際は、奥様にバレないようにガレージ内で行ったりするそうです。店主はあとでテーブルまで来てくれて少しお話ししましたが、全く怖くなく優しい方で、「愛知から中川さん目当てにきました」と伝えると「それはそれは・・・この人そんなすごいの?笑」と笑いながら、カットされた桃をサービスでプレゼントしてくれました。
いろんな話をしてからお店に戻って少しすると、上に書いた通り息子さんたちがお店にやってきます。店の前に到着した車に向かって「ぁ、来た来た、Hey you!!!」と中川さんが迎えに行きます。お仕事に向かわれる奥様が行ってしまってからは、二人の息子さんを床屋へ連れて行かなきゃいけないのに、先ほどパッケージングしていた荷物を配達業者がなかなか取りに来ずソワソワされていたので「良かったらkinoさんと店番してますので、行ってきてください。業者が来たら荷物、渡しておきます」とお伝えし、中川さんは一旦外出。その間、kinoさんに色々教えてもらいながら私もいくつか試着させてもらいました。
特に気に入ったのは中川さんが「自信作」というレスレストンのハーフスリーブリネンシャツです。両胸にはフラップ付きのインバーテッドプリーツポケットが配されていて「このポケットの位置が、いいでしょ〜。オボさんは生地の透け、気にする? 結構ここにあると透け防止にもなって好評なの〜」と。確かに、私はシャツは下着なしで着るため、自分ではあまり気にしないんだけど時に汗をかくとセクハラまがいの状態になってしまうことがあるので助かるかも。半袖シャツなんて随分長い間着ていないのですが「この年齢になって無理するのがしんどくなってきて、着てみたらめっちゃ楽でね」と中川さんが話すように、開放的な気分で着られる気持ちの良いシャツでした。私はとても肩が広くガタイが良いので、フォギーさんにあるアイテムでは身体に合わないものも多かったのですが、少し大きめの型紙で作られたこのモデルは非常に快適だったのでお持ち帰り決定です。
戻られた中川さんとその後もいろんな話をして、気がついたら13時の来店から3時間半が経過していました。楽しい時間はあっという間です。最後にkinoさんにお願いして何枚か写真を撮っていただきました。写真で見ても中川さんより私の方がよっぽどおじさんに見えます笑
最後に中川さんと握手をして、退店です。kinoさんのボルボに乗り込む時になって、ちょうど発送する荷物の集荷のトラックが来ていましたが、馴染みのドライバーさんにも中川さんは「〇〇さん〜♩ 急かしてごめんなさいね〜ありがと〜」と声をかけていて、誰に対しても太陽のように接する方だなと印象は最後まで変わりませんでした。それでいてセンスが抜群と来れば、いろんな職人さんたちがトランクショーにやってくるのにも頷けます。私の身体のサイズ感などは中川さんに覚えてもらえたと思いますので、今後はSNSを通して通販することも可能ですが、出来るなら何かのトランクショーの時にお邪魔して頼んでみたいものです。
kinoさんが私の車が置いてある駐車場付近まで送ってくれて、二日間のアテンドのお礼を伝えてお別れです。もうあと2,3泊していきたいような気分になっていましたが、長距離ドライブもあったので早めに帰路につき、いつも通り仕事帰りの妻をお迎えに行ってから帰りました。長くなりましたが、これで私の金沢富山一人旅は終了です。KOKONとfoggy&sunny以外、ほとんどどこへも行ってないのに途轍もないボリュームになってしまいました笑 それだけ私の思い入れが強かったということで、ご容赦ください。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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