KEIICHIRO FUKUSHIMA ビスポークトランク②

Leather goods

そしていよいよ、2025年11月19日。ビスポークトランク受け取りの日がやってきました。Kっちゃんが福島さんに「オボイストのトランクと自分のバッグ、同じ日に納品してほしい」とお願いしてくれていたので、今回はKっちゃんと、もう一人仲の良い友人のさとしさんと3人で行くことにしていました。さとしさんが車で早朝5時台に迎えに来てくれる段取りでしたが、私はあまりにも楽しみすぎて夜中の1時半に目が覚めてしまい、それから朝まで一睡もできませんでした。こんなにも納品が楽しみなのは久しぶりです。この日の東京はとても冷えるとのことだったので、TTBOCOATの3rdサンプル、スミスウールンズのボタニーで作ったTTBOSUIT匠、ジョンスメドレーのタートルネックという出立ちでした。茶色のトランク納品に合わせて、おのずとコーディネートもブラウンになります。

途中サービスエリアで休憩したりしながらワイワイ楽しく福島さんのアトリエを目指します。この日の午後は私だけ別行動で打ち合わせが2件入っていましたので、いつも通りお昼ご飯は食べられないことを想定して休憩時にはがっつりサンドウィッチや海鮮丼などを食べていきました。最近は一人で新幹線で東京へ行くことがほとんどですが、仲間となら車で向かうのも楽しいものですね。

11時半頃アトリエに到着し、いよいよご対面です。壁にはずらっと白い型紙が貼られ、窓から光の差し込む明るいアトリエの中に、私の長年の夢であったビスポークトランクが鎮座していました。

「実は今日の朝5時に、完成したんです。寝てなくて笑」と、ついさっきまで福島さんの手によって命が吹き込まれていたトランクの完成度は、凄まじいものがありました。木材を切り出すところから、全ての工程で福島さんが自分で作業されています。「鞄だけでなく、美しい家具作りなどにも興味がある」と以前仰ってましたが、このトランクを見る限り家具を作ったとしても美しさへの妥協は一切あり得ないでしょう。

トランクを寝かして開ける際に下になる部分。一見デザインのように見えるこちらのスタッズは、こちらの面の6箇所のみ大きな鋲に変更されています。胴体部が直接地面につかないように配慮された工夫です。スタッズ間のステッチは、木枠にドリルで穴を開けて、革と木枠を手縫いで結合しています。これらはあくまでも実用的に必要な工程ですが、それすら美しいデザインとして昇華されています。

福島さんが「アンティークのトランクで見つけてから、試してみたいディテールがある」と言われていたハンドルの取り付け部について。本体と内容物でかなりの重量になるこの鞄は、通常ですと金属の金具を使用することが大きかと思いますが、今回はハンドル付け根を固定する部分にも革が使用されていて、さらにその革の両端にスタッズが打たれています。片側スタッズと比べると負荷が分配されるため、特に重たい荷物を運ぶトランクの機構としては理想的です。ハンドル自体も上下にしっかり幅のあるがっしりとした作りになっていて、持ち上げた際には別格の安心感があります。ちなみにこの辺りの配置についても、黄金比で設計したそうです。

内側には私のリクエストで大きめのポケットを一つ付けていただきました。こちらもマチ部は3枚構造になっており、小物類をある程度入れても簡単には革が伸びてしまったりしまわないようになっています。最初からポケットの口が開いているため、内容物の取り出しもとてもしやすいです。ポケット上には長方形のレザーパッチがスタッズ4点で取り付けられていて、ゴールドの箔押しで“KEIICHIRO MADE IN JAPAN”の文字が輝いています。

実際に中身を収納してみた状態がこちら。13インチのMacBook Air 2019年モデル(そろそろ限界だから買い替えたい)を横に入れてまだ少し余裕があるくらい、バンチブックや万年筆ケースなど、その他革小物類はポケット内に。「これからどんなものを入れて、どこへ行こうか」と夢が膨らみます。

当然ながら底部には5点の鋲が取り付けられていますので、地面に置く際にも安心です。どこの面から見ても完璧な仕上がりで惚れ惚れします。金具は全て真鍮無垢材を使用していますので、使い込むほどに変色していきます。ピカピカな状態も格好いいですが、何年か経って味が出てきてからこのトランクの本当の魅力を再認識させられることでしょう。

実際に手に持ってみるとこんな感じ。福島さんからは「重たいでしょう」と聞かれましたが、私にとってはそんな風には思えませんでした。もちろん鞄自体の重量はあるのですが“これなら絶対に壊れないだろう”と思わせる安心感抜群のハンドルおよびその取り付け方法のおかげなのだろうと思います。

また、これもグローブトロッターとの比較になりますが、ケースに対してハンドルが真ん中付近に取り付けされていることで、持った時にトランクが傾くことがありません。もう慣れてしまっていたのであまり気にしていなかったのですが、グローブトロッターのアタッシェケースを持つたびに僅かな違和感が魚の小骨のようにつっかえていたのは事実で、今回非常に気に入っているポイントです。

それもこれも、福島さんが私のためだけに設計してくれたトランクだからこそ。四角いハコですので鞄の型紙としては過去に見た中で一番シンプルですが、ここに至るまでに緻密な計算が隠れていることを忘れてはなりません。

ちなみにこの写真の右が、今回Kっちゃんが納品されたベビーカーフのバッグです。あえてトラの強い部分を使用していることもありますが、新品でもこのオーラ。

こちらのバッグも一見すると普通のブリーフケースのように見えますが、マチ部に新しい仕様が採用されています。マチのパーツにこの曲面を出すにはどうしたら良いのか教えてもらいましたが、作る分にはとても面倒くさそうでした笑 他ではあまり見たことのない独特なマチです。

この2つのバッグが納品されるのに合わせて、アトリエのラグについても色を合わせておいてくれたようです。同じ茶色ではありますが違う革、それでいて一体感があります。この角度から見るとハンドルひとつ取っても形状の違いがあり面白いですね。

アトリエをバックに三人で記念撮影。2025年は1月にFugeeのバッグ受け取りから始まりましたが、最後にもこんなに素晴らしいバッグが待っていたとは。まさに鞄の一年でしたね。

このあと私は打ち合わせなどで銀座-神田あたりをうろうろしていたのですが、格別なバッグのおかげで楽しく仕事が出来ました。新品の今よりも、今後使い込んでいくことで途轍もない雰囲気を放つトランクに進化していってくれることと思います。時の経過が刻まれていくこのトランクの姿を、間近で見られる特別な幸せを噛み締めています。

来年は日本全国各地で、TTBOのトランクショーを隔月で開催していく計画を立てております。その際にはこのトランクもつれていきますので、興味のある方は是非お声がけください。私の自慢に、どうかお付き合いください笑

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