東京二日目。今回は年の瀬ということもあり、それほど打ち合わせをパツパツには詰め込んでいませんでした。数ヶ月前から気になっていた職人さんにDMでアポを取り、朝から訪問することになっていました。つい数日前に第二子が無事に誕生した家族思いのシャツ職人RYO IKEDA。「行きたかったです!」と残念がっていたので、せめてシャツだけでもと最新作を着てきました。頼むから寝てくれというレベルで仕事に没頭して徹夜しがちな池田さんには、ご出産祝いにカタログギフトをお贈りしました。これからも身体を壊さない程度に頑張ってほしいですね。

空き時間にはカフェでブログを書いたりして時間を潰していました。旅のお供にはKEIICHIROのビスポークトランクと文二郎さんのビーバーハット。今回珍しくハットを持ってきた理由は、今日訪問する先こそまさしく初めてお会いする帽子職人さんのお店だったからです。これまでこのビーバーの他に、アンテロープ、パナマとBunjirowでは3つの帽子をお願いしてきました。せっかくなら今まで持っていない感じの帽子が欲しいなと色々と妄想を膨らませながら、約束の時間になるのを待ちます。

お邪魔したのは馬喰町に今月オープンしたばかりのCROWTED HATTERSさん。インスタで帽子を作っているリールを見つけてから数ヶ月、何かの折に是非一度お会いしてみたいと思っているうちに新店舗が出来、このタイミングしかないかなと。素敵なビルの4階にありますので、少し緊張しながら階段を登っていきます。本当は今日から年末年始のお休みと投稿がありましたが、失礼を承知でDMで連絡してみたところ快く対応していただけました。

新店舗オープン直後、入口の前にはたくさんの胡蝶蘭が届いていました。店舗の奥でまさに職人のカズさんが帽子を作っているところでした。初めましての挨拶をすると、DMを送ってあったので私のインスタもどうやら見てくれたようで「スーツ屋さんなんですか?」と質問されました。かいつまんで本業とTTBOのことを簡単にご紹介し(TTBOが何屋さんなのかいまだに説明する時に迷います)、帽子を見せていただきます。

「いつもBunjirowでオーダーをしていて・・・」と伝えると、何度かカズさんも文二郎さんに会ったことがあるようで、話が盛り上がりました。やっぱりかぶってきて良かった。TTBOでたくさんの靴職人さんの作品を見ていて「同じ靴でもみんなそれぞれ全然違うな」と最近思うことが多いのですが、当然のことながらそれは帽子の世界においても同じこと。CROWTED HATTERSさんでは、国内のほとんどの一般的な帽子屋で使用されているような通常のラビットファーフェルトやビーバーフェルト以外に、それと比べると約2倍程度密度の高いウェスタンウェイトのラビットやビーバーを海外から取り寄せて使用されています。触ってみるとその差は歴然で、文二郎の軽さに慣れている私にとってはちょっと衝撃を受けるレベルで硬い触り心地。

オーダー方法は全部で3種類。既製品・サイズオーダー・カスタムオーダーと分かれています。サイズオーダーとカスタムオーダーの場合には、こちらの木製の専用器具で頭の形を測定します。全部で48箇所を測ることが出来、私も早速お願いしたところ「左前のあたりが当たりやすい頭の形状ですね」とアドバイスをいただきました。ちょうどこの日、あまり普段は出来ないのにちょうど指摘されたあたりにニキビが出来たところで、もしかすると慣れないハットがおでこに当たってダメージを与えていたのかもしれません。

正直、行く前から最上級のカスタムオーダーしか考えていなかったのですが、雰囲気を見るために色々と試着させてもらっていたらこちらのハットのサイズ感と配色が気に入ってしまって。カスタムオーダーの場合はブリムの高さやブリムの幅、リボンの色などを自由に選ぶことが出来るのですが、帽子初心者の私はまずはこちらのseekというモデルを試してみることに。「サイズの測り方や素材は一緒ですから、気にいるのがあったのならお得ですよ」とカズさん。確かにそれはそうかもしれない。ちなみにブリム幅はBunjirowと比べてもかなり長い9cm。「最初は8cmくらいでもいいと思いますよ」とアドバイスいただきましたが、試着しているうちに目が慣れてきて、大きい方が格好良く思えてきたのでこちらのサンプルのままで。

こんな感じで、サイズを合わせて頭にはめたシャンプーハットのようなパーツの内側に、実際に帽子を作るときに使うもう一つのパーツを合わせていきます。この数値はCROWTED HATTERSさんで保管され、サイズに変化がない限りは2つ目以降は採寸がなくてもオーダーすることが可能。ビスポーク靴の木型と同じですね。

実際に私の帽子に木型を当てて、どこが頭に当たってしまっているのかを分かりやすく解説してくれました。Bunjirowのハットと比べると圧倒的に生地がしっかりしているので、ちゃんとサイズが合っていないとますます痛いらしい。

他にも、根本的な作り方からしてBunjirowとは違っていて、クラウンの成形についても型を使わずにカズさんが手作業で行っているそう。「必ずブリムを持って、クラウンの部分は型崩れの原因となるので触らないように」と説明してくれたBunjirowとは対照的に、CROWTED HATTERSの生地や作り方の場合、クラウンの前の部分をつまんで着脱して大丈夫とのこと。旅行の際など持っていくと、地味に気を遣ってしまうので、強靭なのはありがたい。より相棒感が強くなりますね。

帽子の話の後にも、本業やTTBOのことを色々と聞いてくれたので盛り上がってしまって、結局1時間半ほど滞在してしまいました。社会人になってからずっと帽子業界にいるというカズさんは偶然にも私と同級生で、とても話しやすいカッコいい職人さんでした(顔写真撮り忘れてしまった)。帽子の完成は3ヶ月後くらいとのこと、出来上がり次第また東京へ取りに行こうと思います。昔からの得意技、待つ楽しみが増えました。


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