イギリス好きな私がナポリ流テーラーでフランス源流のジャケットをビスポークしてみた。

Clothes

TTBOはまだまだ認知度の低い新規店なので、頻度は高くありませんが、時々ブランドやメーカーから営業の連絡が入ることがあります。ほぼ元々お世話になっていた職人か、その職人の紹介以外のトランクショーや製品の取り扱いはTTBOではしてこなかったので、基本的には遠慮するケースばかりです。しかし、サルトリアクチノの口野さんからご連絡いただいたときは率直に“嬉しいな”と思いました。

ソリートの親父さんの方、ジェンナーロ・ソリート氏のもと、ナポリで研鑽を積んだ口野仁史(くちのさとし)さんが京都の祇園で営むビスポークスーツ店、サルトリアクチノ。ご存じの通り私は昔から英国贔屓のためナポリやフィレンツェなどのイタリアンクラシコは通って来なかったのですが、口野さんの仕立てた服をSNSでフォローしている方がよく着ているのを見ていて「格好良いなあ~」と思って見ていたので、連絡をいただく前から存じておりました。「お店のアイテムや色んな方がトランクショーをされていて素敵で惹かれました。明日明後日と名古屋に行く予定があるので、ご迷惑でなければ一度ご挨拶に伺わせてもらえませんか」とご連絡をいただいたのが先月末の話。会社員としての仕事の日だったので、そのあと夜でもよろしければということで、TTBOへお越しいただきました。“同業”と言うにはあまりに烏滸がましいのですが、曲がりなりにもスーツの販売をしている店を運営している身、ビスポークスーツの職人さんがうちでトランクショーをしたいと思ってもらえるとは光栄なことです。

TTBOではこれまで色々なイベントを開催してきましたが、スーツに関しては一貫してTTBOSUITのみを打ち出してきました。このブログの読者様であれば今更説明するまでもありませんが、英国生地のみを使用した英国スタイルがベースとなっているオリジナルモデルです。口野さんが着ていたジャケットを試しに羽織らせていただいたのですが、軽さと柔らかさにびっくりしました。ジャケットひとつで印象も随分変わるものです、鏡越しの自分がとても穏やかそうな別人に見える笑

スーツに限らず、どなたかのトランクショーを開催する場合は必ず、まず私自身が実際にお金を払ってオーダーして、その間のやり取りなどのスムーズさや、出来上がった商品の良さを確認してから判断させていただいております。小さな店ですが、TTBOでは私自身が心から良いと思ったヒトモノコトしかご紹介をしたくないですし、お客様もそこに安心感を覚えてくださっているものと思っております。しかし口野さんの場合は悩みました。話してみて人柄にはとても惹かれるものがありましたし、ジャケットの着用感ももちろん素晴らしかったのですが、ナポリスタイルのスーツを私が着ることはおそらくありません。「スーツや、普通のジャケットじゃなくても、オーダーは受けてもらえるのでしょうか? 例えばカジュアルなジャケットとか」と相談したところ「実はそういうことをやりたいとも思っていたので、大歓迎です」と快諾してくださいました。

「是非一度口野さんのお店も見せてください」ということになり、2週間ほど間をあけて祇園の店舗に伺ってきました。前日に妻が京都のマルシェに出店していたため、私も前日会社の仕事が終わってから新幹線で京都へ移動しホテルで一泊。「買い物でもして待ってて」と高島屋で妻をおろして、コインパーキングに車を置いて向かいました。いつもどこでも外国人で混んでいる印象の京都ですが、アトリエのある小路は喧騒から離れて落ち着いた印象でした。

インターホンを押すと二階から口野さんが玄関まで迎えにきてくれました。階段を上って店のドアを開けると、目の前にはまずアトリエが広がっています。口野さんのほかに2名のアシスタントがこの場所で日々服を作っているとのこと。生地が置かれた什器はなんとDIYで「最初そんな内装にお金かけれなかったもので」と謙遜されていましたが、作業台としてもストック生地置き場としても使いやすそうで、うちにも作ってもらいたいくらいでした笑

奥に長い店内、接客スペースの窓の外には青々とした木々が茂っていて、一見して「綺麗な空間だな」というのが第一印象。元々は民泊として使われていた物件だったそうで、長いハンガーラックなども最初から設置されていたといいます。

サルトリアクチノではスーツやジャケットでそれぞれ仕立て代が決められており、生地については実費分のみが加算されるというシステム。生地には利益が乗っていないので持ち込みに関しても歓迎ということで、私は自分の生地コレクションの中からデッドストックの深喜毛織、漆黒のピュアカシミヤを準備していきました。普段使っているというイタリアから取り寄せている芯地も見せていただきながら、どんな仕立てにするのがよさそうか話し合います。

デザイン詳細に関しては仮縫い時などに詳しくご紹介出来ればと思いますが、先述の通り純ナポリスタイルのスーツやジャケットはおそらく着なくなってしまうので、オーダーのベースにしたのはフレンチハンティングジャケットです。イギリスやアメリカと比べれば洗練された印象のフレンチハンティングですが、そのままだとまだ土臭いので、腰ポケットは元のデザイン通りマチ付きの大振りなポケットを付けますが胸ポケットに関してはもう少しシンプルに仕上げてもらおうと思います。さらに襟に関しても小振りなスタンドカラーに変更していただきました。細かいところは仮縫い時に調整することにして、今回は大体のイメージを打ち合わせした感じです。

作りに関しては口野さんに頼むのであればその良さがしっかり活きるように作ってもらいたいので、なんとなくの自分の好みはお伝えしたうえで、あまり細かい指定はしないようにしました。まあそれはいつもそうなんだけど。ガチガチに決められ過ぎていると、職人さんも窮屈かなと思っていつも大体半分くらいお任せって感じです。私にとって初めてとなる短寸法による採寸。胸周りにぐるりと一周バンドを巻いて、そこを起点に各箇所を立体的に測っていきます。口野さんがイタリアへ行く前に修行していた日本のテーラーで習った方法で「各部の数値を細かく測ることが出来る一方でハウススタイルを反映させにくいため、しばらく封印していたのですが、最近自分の中でうまくスタイルに昇華出来るようになってきたように感じて再開したんです」とのことでした。

今回頼んだジャケットとは違いますが、ベンタイルで仕立てたラグランタイロッケンコートのサンプルもとても格好良かったです。あえて日焼けさせた味のあるベンタイル生地と、金具など一部ディテールを省略したクリーンなデザインのバランスが秀逸で、しかもこれについてはミシンステッチで仕上げていることから想像以上にお値打ちにオーダーが出来るそう。ジャケットが出来上がった次は是非お願いしてみたい。

というわけでこれまで経験のない「イギリス好きな私がナポリ流テーラーでフランス源流のジャケットをビスポークしてみた」の巻でした。尚、これは本当にルール違反で申し訳ないのですが、役得により夏には仮縫い秋冬には納品という爆速スケジュールで進めてもらえるそうです。次回仮縫い時にはまたブログでご紹介出来ればと思いますので、楽しみにしていてください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました