T.MBH とにかく黒いオーダー会とブルームパティーヌ

Leather goods

T.MBHコラボの「葉合わせカードケース“極小”」を納品いただいてから、せっかくの受注会ですので色々と岡本さんにお話を伺いながら商品を見せていただきました。今回は「とにかく黒いオーダー会」と銘打たれているだけあって、準備された商品も黒一色です。

まずは数日前にブランド公式Youtubeで配信されたばかりの呼薫L字コンパクト。T.MBHでは珍しいファスナー付きのウォレットです。「革の雰囲気にファスナー部が浮いてしまうのではとこれまで使ってこなかったですが、我々の新しい手法であるブルームパティーヌを施工したクロコダイルで作ったところとても相性が良かったのでこの革のみ定番化しました」と岡本さんが話すように、製品完成後にブルームパティーヌが施工されたこの商品はまるで夜の海の嵐のような勢いと奥行きを感じる表情を見せます。通常K18が使われるエクボもプラチナ900に変更され統一感があります。

この手法を開発するにあたっていろんな革でテストを繰り返したようですが、クロコダイルが最も相性がいいようです。通常ブライドルレザーやヴォリンカなどで見られるブルームと比べると、より長くブルームが表面に残り続けるようです。特に腑の部分に入ったブルームは使い続けても残りやすいとのことですし、ブルームが落ちたあとは岡本さんの手によって再度施工することも可能。

左が使用によりブルームの落ちたヴォリンカ

「ブルームパティーヌは単に表情を変化させるためだけの施工ではなく、クロコダイル製品を永く安心して愛用いただくためにもおすすめ出来るものとなっています。ただでさえ敷居が高いと思われがちなT.MBH製品、その中でも最も高価な革であるクロコダイルを購入されるお客様が、万が一のことがあってもブルームパティーヌによって革が蘇ることを理解していただければ、より高い満足度につながるかなと。例えば通常のクロコ製品を使い続けていくうちに「爪の傷がたくさんついちゃった」「誤って洗濯機で洗っちゃった」などいろんなことがあると思いますが、ブルームパティーヌを施せばほとんど復活させることが出来ます。元来私たちが展開する革小物は“手入れは不要”と言い続けていますが、万が一のことがあったときはこれでケアを出来ると。革靴業界は革靴を売っているお店の他に、リペアショップや靴磨き屋さんまでたくさん揃っているでしょう。ブルームパティーヌはいわば“靴磨き屋さんの革小物Ver.”と捉えていただければ分かりと思います」

Youtubeでピ〇太郎形式でブルームパティーヌを紹介されていた岡本さんですが、その深層にはお客様がエキゾチックレザーをより安心して使い続けられるにはどうしたらよいかを真剣に考え続けている姿勢があり非常に感銘を受けました。確かにクロコの製品、高価ですし人によっては気を遣いますよね(私が気にせずにガンガン使っちゃう派ですが)。嬉しいのは、既に使用されているT.MBH製品や他社製品にもブルームパティーヌのみ施工してもらうことも出来るようになるという点。単にブルームを塗るだけならそれほど難しいことではないかもしれませんが、まるで葛飾北斎が描く迫力満点な白波を思わせる芸術的なパティーヌは、T.MBHのスタッフの中でも岡本さん自身によってのみ施工可能な特別なものになります。

同じクロコでもスムースとヌバックでブルームパティーヌ後の革の表情は大きく変わります。ヌバックの方が大人しく、スムースは荒々しく。

ブラックのクロコダイルだけでなく、今回見せていただいた中にはブラウンのヌバッククロコに施工した商品もラインナップされていました。これはこれでどこか金属的な、使い込まれたブロンズのような重厚な雰囲気が漂っています。今回の受注会でもその場で施工を希望されるお客様がいらっしゃったようで、私は迷いましたが今のヌバッククロコをさらに使い込んだあとでお願いしようかなと。

ヌバッククロコ(右)と
ブルームパティーヌ後のヌバッククロコ(左)

ぽちつむのクロコダイルにもブルームパティーヌが施工された商品が並んでいました。「製品後のパティーヌといことですが、施工時に商品を潰してしまって形が崩れたりしないのでしょうか?」と質問すると「ぽちつむはお洋服と同じように表裏の革の寸法に差をつけることで形状記憶されるようになっているので、たとえばね、ほらこんなことしても・・・」とおもむろに超高級クロコぽちつむ(70万円以上します)を雑巾のように軽く捻じる岡本さん。衝撃的な光景でしたが、手を放しポンっと机に置けば最初と同じように自立するバッグにちゃんと戻っています。一件シンプルでありながら、正確に組み立てることで生まれるこうしたバランスの良さはT.MBH製品の大きな魅力。

ブルームパティーヌ以外にも、レザーリーフの中からご紹介いただいたベルベットのような漆黒のカバ革がとにかく素晴らしくて。葉合わせコイン札用にカットされたこちらの革は「こういうのはもう入ってこないんですよ、部位や個体によって染色具合も様々で、狙って出した色じゃないですからね」と岡本さんが言われる通り、こんな素敵なカバはもう二度と出会えない気が・・・しましたが、岡本さんに白状した通り“コラボ貧乏”でちょっと資金繰りが厳しいので今回は見送りました。読者の方でどなたかいかがでしょう、これまでに見た革の中でも3本の指に入る魅力あふれる革でした。

その後も、岡本さんが「革に限らず全国の腕利きの職人さんを教えて」と知人から問い合わせがあったというものに、オボイスト的視点ですごいと思う職人さんを列挙してお伝えしたりしている間に受注会の1時間はあっという間に終了。「今度は是非ご飯でも」とお誘いをして、名古屋観光ホテルをあとにしました。

翌朝、私の小物コレクションを集めて記念撮影をしました。手に入れたばかりのヌメエレファントも、昔からそこにあったかのようにお気に入りのアイテムたちの間に馴染んでいます。“極小”の良さは写真では伝えきれないと思うので、近日中に久々のインスタライブで配信できたらなと。気になる方、口下手な私が頑張ってしゃべりますので楽しみにしていてください。

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