ROCK ‘n’ Oboe

先日、鳴ル銅鑼というロックバンドのLIVEにオーボエで出演しました。

最初に声をかけられたのは何月だったかな、去年の春くらいだったように思います。

バンドメンバー4人のうち、ベースの男がオーケストラ時代の友人で、私を含むオケ隊は全てその頃の同期で集まってライブのお手伝いをすることになりました。“隊”と言っても、ヴィオラ、チェロ、ピアノと私のオーボエの4人だけです。管楽器は私一人で、ロックバンドの中で一体どうやって吹けばいいのか・・・と練習が始まる前まではかなり不安に思っていました。

しかし、いざ練習が始まってみれば、ピアノを担当した仲間のセンスのいい編曲によってうまい具合にオーボエが活かされ、私も俄然やる気になって仕事の合間をぬって練習してきました。ちなみに、私一人だけが土日出勤の仕事でしたが、みんな上手く休みを合わせてくれて、主に私の日曜日の仕事が終わった後、夜中から明け方までスタジオに籠る、という生活がしばらく続きました。

そして迎えた先月末、本番当日。名古屋の大須にあるエレクトリックレディランドというライブハウスに到着。

コンサートホールでの演奏は何度したことか分かりませんが、ライブハウスでの演奏というのは初めてでした。

まず根本的に違うのは、オーケストラというのは耳で生の音を聴きながら、客席の方までどのように響かせようか、今日は響くホールだからかための音色にしよう、などと色々と考えながら臨機応変に吹き分ける必要があるわけですが、ライブハウスでバンドに囲まれての演奏では、そもそも自分が吹いている音すら満足に聴こえません。さらに自分はセットされたマイクに向かって吹かなければならないため、身体の動きにもある程度気を使う必要があります。

当日、昼過ぎから始まったリハーサルで約3時間くらいかけて、モニターと呼ばれる自分の前に置かれたスピーカーから聴こえてくる音を作ります。ベースがもっと聞きたい、ボーカルを抑えめで、チェロも欲しい・・・などと、その都度スタッフの方に伝えながら自分が吹きやすい環境を整えていくのです。最初はやはり慣れなくて、要領を得ませんでしたが徐々に自分の理想の音量バランスを整えることが出来るようになりました。

ただ、このモニター越しに聴こえる音が全てなわけですから、客席側にどのように響いているのかは自分では全く分かりません。これが非常に不安に感じました。バンドの世界では普通なのでしょうが、よくこれで演奏が出来るものだと感心したものです。

リハーサルを終えて、一旦控え室へ・・・結婚式で着たアルマーニのタキシードやボレロのストレートチップ、ここぞとばかりに着てやりました。特にアルマーニはこういうときくらいしか着る機会がありませんからね。

本番が始まってライブの前半は、結構緊張してしまいました。オケの本番は1500〜2500人程度収容可能なホールでの本番ばかりで、それはそれで緊張するのですが、ライブハウスはお客様との距離がとても近く、しかも確かにそこにいるのは感じるのですが白いモヤモヤのせいでどの程度人がいるのかいまいち分かりません。とにかく、私オボイストにとってみれば未知の空間で演奏しているような錯覚に陥り、少しかたくなってしまいました。

中盤には3曲、バンドメンバー4人だけで行うアコースティックコーナーがありましたから、その際に少し落ち着いて、後半戦。

だんだんと気持ちよくなってきていい感じ。ボーカルに音の形を寄せるという経験もこれまでありませんでしたが、これがうまくいくと結構快感なんですね。自己満足の世界です。

特に最後の二曲に関しては私も練習しているうちに好きになってしまった曲で気持ちが昂っていたのもあり、終演後応援に駆けつけてくれた友人から「時々オーボエがボーカル食っちゃうんじゃないかと思った」と言われる程ノリノリで吹いていました。客席側にそんな風に聴こえていたのか・・・!と焦りましたが、バンドメンバーからもらった当日の録音を聞くと「このくらいオーボエ聴こえてもいいじゃない?」と思える程度でしたので、とりあえず良しとしましょう・・・σ(^^;)

というわけで、この度は非常に貴重な経験をさせていただくこととなって、鳴ル銅鑼の皆さんには心から感謝を申し上げたいと思います。実はベースの友人は、私が妻と交際するに当たって重要なアドバイスをくれた男でもあって、いつかその借りに対し恩返しをしなくてはと思っていたので、今回お手伝いすることが出来て個人的な事情に対しても満足感があります。

すでにROCK IN JAPAN FESなどに出演し活躍されている彼らですが、いつかまた共演できる日を楽しみに、私も陰ながら応援していこうと思います。ジャンルは違えど音楽を通してこうした交流が生まれるのは本当に素晴らしいことです。

靴も服も好きだけど、結局一番好きなのはオーボエのようです。これからも機会をいただければ吹き続けたいと思います。

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