コロナでマスク着用が当たり前になってから、そういえば眼鏡をかける機会が増えました。
元々裸眼でもギリギリやっていけるくらいの視力の私ですが(両目で0.6~0.7位)、気づいたら眼鏡は何本も持っています。恒眸作、杉本圭、妻とお揃いのJINSにアランミクリ、サングラスはオリバーゴールドスミス。どれも気に入っていますが、買っても買っても終わりが見えない。「次はあんなデザインが・・・」「あのブランド気になる」と言うなれば沼。中でも私は中庸なデザインのセルフレームが好みのようで、調べれば調べるほど気になるものが増えていく。
これではいつまで経っても終わらないと、何年か前に眼鏡職人が一から十まで全部一人で作る作品を探しました。有名どころではナッキーメイド、ハワイのレザーソウルや香港のArmouryでも取り扱いのある世界的人気を誇るブランドですが、ナッキーさんは神戸の職人さん。なかなか向こうへ行く機会もないし、天邪鬼な私はもっと近いところでどうやら良さそうな眼鏡職人を見つけます。それが12homemadeでした。
愛知県の清須市で作られる12homemadeを見つけたのは2,3年前だったと思います。「愛知県にも眼鏡職人さんがいるんだ!」とすぐにブックマークしました。そして最近になって例の如くマークチョーさんがナッキーメイドの薄いカラーの丸い眼鏡をかけているのを真似したくなり、「県内の北の方で眼鏡職人がいたはず、だけどなんて名前だっけ・・・」とブランド名もブックマークしたことさえも忘れてしまっていて、“愛知 眼鏡 職人”などと検索しても結局見つけられずに諦めかけていたところ、ひょんなことから自分のブックマーク内で12homemadeを再発見。頭が悪いので再び忘れないうちに訪問してきました。
身体の大きな土屋さん、どんな方かなと思っていましたがとても気さくでフレンドリー。以前から気になっていたことなどを伝えて、店内の眼鏡を拝見します。アセテートを全て手磨きし手間暇かけて作られる12homemadeの眼鏡。私は時計も靴も鞄も帽子もスーツも、作り手の顔が見えることと縁を最重視しています。もちろん、世界に誇れるような腕の職人さんの作品であることも条件の一つですが、不思議な縁が連鎖して各職人さんたちと繋がっていくことが私の人生の楽しみ方とも言えます。
仕事の話や趣味であるブログの話などで盛り上がると、土屋さんとは意外なところで共通点が多くありました。例えば、土屋さんが展示会に出張した際に立ち寄った本屋で女性店員に「ちょっと時間があるから、普段全然本読まないけどおすすめはあるか」と聞いてオススメされた本が貴志祐介と冲方丁で、それ以来二人のファンになったということ。小説大好きな私はあまり偏らずに色々な書き手の本を読むようにしていますが、貴志さんと冲方さんはそんな中でも繰り返し買って読んでいる作家さん。
更には「Sewn shoe-makerってところとコラボして靴出してるんです」と話すと「知ってますそこ!」と。革靴をほとんど履いたことがないという土屋さんが何故Sewnを知っているのか不思議に思って聞いてみると「JUCOってブランドのご夫婦がうちのお客さんでね、普段スニーカーが多い僕におすすめの革靴あるかって聞いたらSewnさんを勧められたんですよ」とのこと。JUCOはまさにSewnで取り扱っているレディースのシューズブランドで、こんなところでも世界が繋がってしまいました。他にも色々あるのですがとにかく眼鏡そのものも素敵だし、ご縁を感じたので即座にオーダーすることを決意しました。
マークチョーがかけているようなまんまるに近い形の眼鏡が欲しかったのですが、サンプルにあった近い形のものを顔に当ててみると何となくしっくりこない。土屋さんに聞くと「バチッと真面目な雰囲気の方がまんまる眼鏡するとちょっと面白い感じ出ちゃうんですよね〜」と。私が真面目どうかは置いておいて、クラシックな形で他におすすめがないか聞いてみたところ勧めていただいたのがこちら。
土屋さんのところの眼鏡はブリッジの部分を少し幅広に取ることによって、目の位置がレンズの少しだけ内側に寄るように計算されているようです。(6:4のバランスになるように) さらに、眼鏡の前傾角は8度になるようになっているそうで、その理由は「人間が力を入れずに自然にしたときに最も疲れない角度」なんだそうです。眼鏡の専門学校でしっかりと勉強されている土屋さんは鯖江などで眼鏡作りの仕事をしてから2004年に独立されたということですが、オリジナリティを加えながらも基本的にはベーシックでローテクな眼鏡作りをされているのがお話からも感じられ、細かいことは私には分からないけど「この人に任せておけば絶対大丈夫」という安心感を得ることが出来ました。顔に当ててもとてもしっくりきたし、モデルはこちらで決定。
ブリッジの幅やテンプルの角度は私の顔のサイズに合わせて削りを調整をしてくれるようです。
今使っている眼鏡を見せながら、眼鏡に関しての悩みなどいくつかヒアリングを受けながらオーダーを進めます。
フレームをバイカラーにしたり、テンプルを別の色にしたり、鼻当てをクリアにしたり好きなようにオーダー出来ます。ちょっと迷いましたが、今回はストイックに全ての部位をシャンパンカラーで仕上げていただくことにしました。
仕様が決まったあとは、奥の部屋に行って視力測定。オーダーから納品まで半年から9ヶ月ほどかかるため、お客様の中にはフレームが出来上がってから視力検査をしレンズを入れる方もいるそうですが、私の場合それほど短期間で視力は大きく変化しないだろうということと取りに来たときには完成した状態にしておいていただきたかったので当日検査してしまいました。他の店舗で取り付けすることも出来るようですが、レンズ代金も割とお値打ちでしたし、それよりもせっかくなら全ての工程を土屋さんにお願いしたかったので。
会話の引き出しの多い土屋さんとつい盛り上がってしまって、気がついたら2時間以上居座ってしまいました。帰り際、「ぁ、そうだ・・・これ、プレゼントしまーす!!!」と分厚い眼鏡特集本までもらってしまいました。4,000円くらいする高級な本ですが、本当によろしいのですかと聞くと「ブログの取材代、ということで!」とのご厚意に感動。しっかり読み込んで、眼鏡について勉強しようと思います。名だたるブランドが勢揃いしていますが、12homemadeは表紙を飾る9ブランドに選ばれていました。ブランドを作る人とともに、詳しく紹介されていますので気になる方は是非リンクからどうぞ。今度土屋さんには、お礼におすすめの小説を何冊か見繕って差し上げよう。
新しい待つ楽しみが出来ました。土屋さん、この度はありがとうございました。完成楽しみにしております!
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