トランクショーが終わってからは、私のクラウンで一回ホテルまで4人で移動し、そこからタクシーに乗って籠屋町の鳴帆渡という店に移動しました。予約必須の人気店のようで、タクシーの運転手さんにも「予約してあります?」と確認されました。徳島へ向かう道中で岩田さんが「魚食べたいっすね〜肉より魚派なんですよ」と話していたのですが、それをYさんが察していたかのように、存分に海の幸を楽しめるお店です。

いつも通りといえばいつも通りですが、今回は本当に朝のビュッフェ以来この瞬間まで、ほとんど飲まず食わずでしたので、カラカラの身体にビールが沁み渡ります。そんなにお酒強いわけでないのですが、トランクショー後のこれだけはやめられません。田岡さんとは結局イベント中もじっくりはお話し出来ていませんでしたので、これを機に仲良くさせていただきたいなととても楽しみにしていました。

田岡さんが職人に至るまでの経緯のこと、今何を思って革職人として過ごしているのかということ、逆に私がTHE TRUNK BY OBOISTという店を構えるに至った経緯や、その前のこと。Yさんが今のお仕事につくようになるきっかけや、岩田さんが職人になる前のお話し。当たり前のことですが、みんなそれぞれにストーリーがあります。どこまで書いて良いのか分からないのでここでは控えますが、信念を持って働く人は格好良いですよね。そういう職人さんを私は応援したいし、自分もオーダーしたいと思えるからお客様に紹介出来ます。

お料理はどれもこれも最高に美味い、さすがYさんのチョイスした店です。料理が美味いと会話も弾み、私はもう我慢できなくなり「僕のバッグ、どうですか?」と田岡さんに聞いてしまいました。実は徳島トランクショーが決まって少ししてから、私は田岡さんに「こんな感じの、ブラックのスエードを使ったバッグをオーダーできないか?」と相談していたのです。どんな感じかについては後ほどご説明しますが、それに対してのアンサーをまだちゃんとお話し出来ていませんでした。そして田岡さんから語られたのは「オボイストさんの過去の投稿なども改めて拝見して、恐縮ですが・・・スエードよりチャリ革、どうかなって勝手に思っているんです」という提案。チャリ革は私が2018年に最初に買ったFugeeの名刺入れに使われている山羊革の一種で、大好きな革の一つです。とはいえ「中に入れるものや使用用途などについて、詳細を伺いながら提案したい」ということで、最終的な仕様についてはアトリエでじっくり腰を据えて話し合うことになりました。
翌日。昨日と同じようにホテルビュッフェを食べてから、岩田さんを徳島駅まで送っていきました。関西方面のお取引先を数件回って帰るということで、ここからは別行動。二人ともチェックアウトの際には「まだ徳島にいてぇよぉ」と名残惜しい気持ちが込み上げてきました笑 Yさん曰く「みんな大満足で、早くも次はどんなものをオーダーしようかと盛り上がっていますよ」とのことでしたし、今回は来られなかったYさん関連以外の四国のお客様にも是非お会いしたいので、ghoeでのトランクショーは定期的に開催させていただきたいと思っています。バッグの仮縫いや受け取りもありますし、ハンガーラックも購入したことですし笑

そして再びghoeに戻って撤収作業。先に郵送していたバンチなども帰りはトランクに積み込みました。サイズゲージだけは帰りもハンガー便で郵送にしたのですが、着払いの佐川の伝票を持ってくるのをうっかり忘れてしまったのですが、田岡さんが翌日発送してくれてとても助かりました。こういうところ、まだ外でのトランクショーに慣れていません。今年は機会が増えていきますので、今度は忘れないようにしないと。

撤収後は、いよいよビスポークバッグについて打ち合わせです。最初バッグをオーダーしたいと田岡さんに連絡した際は「オボさん、そんな気を遣わないで、場所自由に使ってもらって良いんですよ!」と遠慮されたのですが、もちろんご協力いただいた御礼にという気持ちもありますが、私は単純に田岡さんに作って欲しいバッグがあるのです。最近メインで使っているのはFugeeの口枠鞄FM42と、出張時には気分の上がるKEIICHIROのトランク、そしてそれぞれには大抵TTBO Essential clutchが入っていて、身軽に動きたい時はTECという感じなのですが、全部中身を取り出すときにちょっと手間のかかるカバンばかりなんですよね。もちろんそういうクラシックなバッグが大好きであるが故の悩みなのですが、ひとつくらい所謂“便利なカバン”が欲しくて。ただ私はすっかり拗らせているので、便利だからといって格好悪いと多分全く使いません。ghoeに依頼したいのは、そんなバッグです。便利だけど、格好良いやつ。

一つ私の中で、今回色はブラックでいこうというのは揺るぎなく決まっていましたので、アトリエにある中からオススメの黒い革を見せていただきます。昨晩の打ち上げ時にも提案されたチャリ革を筆頭に、ボックスカーフや北海道のヒグマなども出てきました。元々スエードで検討していたのは、便利に=ある程度タフに使うという前提もあったので、ボックスカーフは対象から外しました。迷いましたが、最終的に選んだのは、、、

ブラックのエレファントです。奇しくも、妻が選んだカードケースと同じ革になりました。最後まで悩んだのはヒグマでしたが、Chat GPTにghoeの過去作品の藍染めエレファントのトートバッグを黒くしてもらってイメージしたところ、元々欲していたスエードの“黒み”とタフさが見事に両立出来たためです。というより、もちろんスエードよりエレファントの方が欲しいに決まっているのですが、価格的な面でビビっていたのもあります笑 ghoeの田岡さんは現在37歳ですが「40歳までは価格を抑えてでもとにかくバッグを作りまくって研鑽を積みたい」という強い意志があり、常に金欠の私でも頑張れば憧れのエレファントに手が届くくらいの設定でした。詳しい見積もりと仕様については、現在田岡さんが作ってくれています。これまでクラッチバッグまでは黒いエレファントで作ったことがあるそうですが、大きなバッグは初めてとのこと。もう間違いなく良いバッグが仕上がると信じて止みませんが、読者の皆様も14ヶ月後の完成を楽しみにしていてください。
ghoeを出てからは、私は単身香川県東かがわ市へと移動しました。目的の一つ目は、元々アポイントメントを取ってあった平田商店さんへお邪魔するためです。ふるさと納税でシープのグローブをオーダーした際に「いつかお邪魔しますね」と連絡してからというもの、実に5年以上経ってしまいました。Googleのナビで向かったのですが、クラウンのサイドミラーを畳んでギリッギリ通れるか通れないかくらいの道をしばらく行き「流石にこれは違うかな」と通り過ぎてしまった“平田”の表札の、一見するとと普通の家のように見えるところがまさに平田商店さんでした。「多分迷われているかなと思って」と玄関から平田商店二代目・平田哲也さんがお出迎えしてくれました。見るからに優しそうな、ずっと目を細くして優しい笑顔を向けてくれるような方でした。

玄関を入ってすぐの応接間で、名刺を交換して自己紹介をします。私は大抵、職人さんと会う時にはTTBOと本業の名刺を両方渡すようにしています。すごく細い道だったと伝えると「えー!あそこクラウンが通れるんですか!フィットでも通ったことないですよ!笑」と驚いてみえて、どうやらGoogleMapあるあるの、最短距離ではあるが現実的ではない道を通ってきてしまったようです。普通に通れる道を教えてもらったので次からはスムーズに来られそうです笑 応接間から奥に入ると、すぐ裏側の工房では、初代である哲也さんのお父様と、奥様がグローブを作っておられました。平田商店は家族経営、最近は作業に入ることはあまりないということでしたが、隣の部屋にはお母様もお見えでした。
「全然片付いてなくてすみません、狭くて、身動きとれんでしょー笑」と皆さんが少し恥ずかしそうにしていましたが、職人さんがものづくりをする現場が大好物な私にとってはご褒美のような空間です。奥には手袋用の革がたくさんストックされていて、国外のコレクション向けの生産などOEMが中心の平田商店さん。当然のことながら手袋にもシーズン毎に流行があり、毎年パリコレなどの時期には大忙しだそうです。

お父様が作業されているところや、手袋作りに使われる抜き型なども見せていただきました。今ではどこも作っていないような鋼の器具も、手入れをしながらであれば一生以上に使えるそうです。それにしても、この空間から家族で生み出した作品が世界へ向けて発信されているなんて、すごいことですよね。万が一平田さんが辞めてしまったら、困るブランドがたくさんあるんだろうな。
それ以外にも、ちょうど年末のふるさと納税の締めの時期直後だからなのか、デスクにはレターパックがたくさん置かれていました。私もこれに入って送られてきたセルフ採寸オーダーキットを使った覚えがあります。返送されてきた手型などは、このままレターパックの封筒ごと保管しているようです。「デジタルで管理できたら楽なんやろうけど、このレターパックがちょうど良いんですわ」とのことでした。四国に来てから感じたことですが、徳島も香川も、私が住んでいる愛知と比べると時間の流れ方がゆっくりで皆さんとても穏やか。山も海も近い、自然豊かな環境が人の心を癒すのでしょうか。私は今回初めて訪問したのですが、正直ちょっと移住したいと思ってしまうほど魅力的な街でした。

さて、訪問するからには何かオーダーしようとは企んでいましたが、豊富な革のストックを見ていると迷ってしまいます。深いグリーンのイタリアンシープを見せていただいた時には「TTBOのロゴと同じ色ですね」と盛り上がりました(ちなみにその革は奥さまも狙っているそうであと一双分しかなかった)。ペッカリー特有の散弾銃の弾痕なども丁寧に説明してくれました。

「これなんか、最近では珍しい綺麗な革ですよ」と見せていただいたのはブラウンのペッカリー(写真の手袋の下の革)。今持っているシープがダークグレーで、もう一つ愛用しているガンコスのペッカリーがレンガっぽい赤茶なので、色のトーン的にもちょうどいい。「染め屋さんに茶色で染めてって言っても、出来上がってきた時には毎回全然色味が違うんです」という平田さんの説明もあって、気に入った色のペッカリーに出会えたのはラッキーだったということだなと考えて、こちらでオーダーすることにしました。シープと比べると実に4倍の価格となりますが、ペッカリーだけは全て手縫いで仕上げているそうですし、着用感の素晴らしさはガンコスで体験済みなので高いのにも納得です。それも一つひとつ、手に合わせた大きさや好きな仕様でオーダー出来てなお、デンツなどの既製品と変わらないか少し安いくらいですから、むしろ感謝しなくてはなりません。

ふるさと納税ではここまで選べなかった気がしますが、今回はたくさんのカラーのシルク糸から好きなものを選ばせてくれました。せっかくなので少しステッチが目立つようにと、私は43番の糸を選びました。その他、手首の長さについてなどの好みも丁寧にヒアリングしてくれて、安心してオーダーすることが出来ました。何か自分だけの仕様を盛り込みたいとも思ったのですが、結局シンプルに。それが一番、飽きがこないですからね。

完成は3~4ヶ月後ということでしたので今シーズンは着用できませんが、今から26AWが楽しみになってきました。すみません、四国滞在記は2本で終わるつもりだったのですが、またしても長くなってしまったため一旦ここで区切ります。次回が完結編、平田さんとのうどん、読者様との邂逅、京都での妻との合流について、書いていきます。





















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