昨年4月に初めて開催したペルティコーネローマの受注会、今回第二回となる受注会をヒルトン名古屋にて開催いたしました。おかげ様でかなり前の段階で予約枠は満席となり、今回ご案内出来なかった読者の方は申し訳ございませんでした。
国内外からの旅行客が増えてきたので、ホテルのデイユースは前回時と比べるといろいろと制限が増えてきました。総合的に判断し、マリオットではなくヒルトン名古屋を利用してみましたが、落ち着いた上質な雰囲気とロビーやエレベーター内などでも清潔感のある良い香りが立ち込めていて、調べてみるとどうやら煎茶のアロマのようです。華やかな印象のマリオットとはまた違った魅力のあるホテルでした。
ロビーに一番早く到着されていたペルティコーネの吉本さんと久々に再開ししばし歓談。大きなスーツケースに大きな身体、見るからにただものではありませんが非常に腰の低い親切丁寧な職人さんです。しばらくすると共同主催者であるNot Fashion But StyleのJunさんがご到着。チェックイン手続きをしてからいざトランクショー会場へ。渡されたルームキーの番号が偶然私の家の部屋番号と同じで、煎茶のアロマで落ち着いていたのもあって初訪問とは思えぬまるで我が家に帰ってきたかのような安心感。
大きなスーツケースにはサンプルシューズや仮縫い靴がぎっしり詰まっています。若干早くチェックイン出来たので最初のお客様の予定時間までしっかり準備。「以前は毎月ひとつは新しいサンプルを作っていましたが、最近は忙しくてなかなか・・・サンプル作りって職人にとっては楽しい時間なんですよ。自分の思い通りに色々試すこともできますから」と吉本さん。確かに前回見たサンプルも多かったですが、中には新作も混ざっていて見るものを飽きさせません。
中でもこちらのストラップシューズは一際目を引く存在で、Junさんとも「良いね~」と盛り上がりました。ヌバックラマの柔らかさと存在感のあるモカ縫い、そしてローマの職人が一点ずつ手作りするオリジナルバックルと、ペルティコーネの魅力を堪能できる一足です。ジャケパンスタイルはもちろん、カジュアルな装いにも使える万能さも兼ね備えている素晴らしい靴、次回以降オーダーしたいモデルの筆頭となりました。
Junさんは当時まだ吉本さんがアウトワーカーとして携わっていたころのクレバリーのビスポークローファーで。この靴自体には吉本さんは関わっていないようですが、美しいの一言です。こんな靴が履きこなせるように自分もいつかなってみたいですが・・・ワニはどんどん手の届かない存在になってきてしまっていて、もう手遅れかなあ苦笑
第一回でオーダーいただいた方の仮縫い靴がこんな感じ。本日の最初のお客様は真ん中のチンギアーレレイジーマンをご注文いただいたKさんです。今回は靴好きの同僚の方を連れてきてくださいました。オーダー自体は大手ブランドのMTOフェア期間などに頼んだものが中心で、ビスポークは経験がないとのこと。この日はバーガンディのWestonを履いていらっしゃいました。手入れが行き届いていて素晴らしいです。
Kさんには仮縫い靴を手に取ってもらって見てもらいます。オーダー時に吉本さんが注意していた通り非常にパリッと硬い革ですが、経験豊富なjunさんによると「履きこんでいくと馴染むのも結構早いですよ」とのことで、ビビらずガンガン履くのが吉のようです。吉本さんからの案内で10分ほど仮縫い靴を履いてもらってから詳細なフィッティングを確認。
この10分間が魔の時間でしてね、時間が経過する前目の前に広がるサンプルシューズたちを手に取って眺めていると・・・ついつい2足目をオーダーしたくなってきてしまうのですよね笑 ニューヨークのトランクショーでは厚みのあるゴートがとても人気だったとのことです。私も現在、SusieSveltにオーダーをかけているバッグもゴートですし、iPhoneケースもブルーグレーゴートのT.MBH・・・と大好きな革なので、靴に仕立てたときどんな風になるか試してみたくなります。
吉本さんによる触診とヒアリング。オーダー時と同じくiPhoneで動画を撮りながら「○○様、左足この部分、あと3mm削れそうです。この部分はあたりがあるので修正が必要です」などと後でご自身で見返したときに分かるように動画で記録されていました。自分用だったらぶっきらぼうな言葉遣いになりそうなものですが、すべて丁寧な言葉で大事そうに録画されているのが印象的でした。
触診が終わった後はもったいないけど仮縫い靴をカットして中の様子を確認します。硬いチンギアーレはカットするのも大変なため、穴あけパンチを使って切りやすくされていました。ぐいぐいっと力を入れて作業される吉本さんが格好良い。職人さんの手仕事を見ているのが私は本当に好きなんですよね、服飾関連に限らずYouTubeで職人動画を漁ってることもあるくらいです(馬蹄つけるやつとか)。
Kさんもビスポークは初めてでしたので「え、切っちゃうの!?」と驚かれていました。あくまで本番靴のクオリティを上げるための一工程に過ぎないとは私も頭では理解していながらも、仮縫い用の別のレザーではなく本番と同じ種類の革で製作された仮縫い靴は、確かにそのままもらって底だけセメントでつければすぐにでも履けそうなクオリティで勿体なく感じてしまいます。同じ種類の革を使うことについて吉本さんは「お客様がなるべく完成時のイメージをしやすいように」と話していました。どこまでも良心的な方です。
K様たちが帰られたあと、あらかじめ買っておいた軽食を3人で摂ったのち、いよいよ私の仮縫いの時間です。他のお客様と違って短い時間で枠を設定してはいましたが、正直言ってこの日一番楽しみにしていたのがこの時間です笑 私はこれまでBoleroで4足誂えてきた以外ではビスポークの経験がありませんので、渡邊さん以外の方の仮縫いを体験するのも初めてでしたのでドキドキです。渡邊さんについて吉本さんは「直接やりとりしたことはありませんが、ボレロさん、靴も人も雰囲気があって素敵ですよね」と話してくれて、渡邊ファンの私まで嬉しくなりました。
まず私がお願いしたデザインのおさらいですが、アッパーとサドルが一体となったローファーをラクダの革とスエードのコンビでお願いしています。小さな革見本を見ながら考えた組み合わせですが、こうして靴として形になるととても上品で綺麗なローファーになりそう。見るからに今までにない雰囲気で、大人の階段のぼる~♪って感じです。文二郎のパナマハットに、明るい生地で仕立てたシティサファリ(2着目はきっとこうなる)をTシャツの上に羽織って、リゾート地で素足のまま履きのんびり時間を過ごしたい。そんな気分にさせてくれます。5年半の歳月を経て2025年に仕上がってくる予定の“あのバッグ”にも間違いなく合うでしょう。
早速仮縫い靴に足を通します。1足目からローファーを受けてくれるペルティコーネとはいえやはりフィッティングは非常に難しいと吉本さんも仰っていました。私の場合よく問題になるのは、
- ・夕方になると小指周りのスペースが足りなくなり痛くなる
- 立ち上がると横に潰れる足のため、内側のトップラインが笑いやすい
- 出っ張った甲骨が当たって痛い
- かかとは小さめなので抜けやすい
このあたりです。特に二点目のトップラインの笑いについては、既成の靴では必ず現れてしまう現象で半ば諦めかけていますが、吉本さんのフィッティングではほぼ完璧に抑えられていて感動。またトゥにかけてもボレロと比べると少し余裕を持ったアプローチをしてくれているのか、非常に柔らかなフェザータッチな履き心地です。もっともこれは、アッパーにつかったラクダの革の特性によってもたらされている感覚でもあるかもしれませんが。かかとについてはぱっと見た感じは隙間はないのですが、歩行時に少し抜ける感じがあったので吉本さんに伝えて調整いただくことに。
仮縫い時にデザイン等の変更が出来るのもビスポークならではの嬉しいメリット。極力シンプルな仕様を目指してサドルの窓を無しでお願いしていたのですが、全体的にすっきりし過ぎかなと感じたのでやはり窓を付けてもらって、そこからスエードが覗くように変更を依頼。モカ縫いは本番用ではもちろんハンドステッチになりますが、シュータンについてももう少し角を落として小さくしてもらった方がバランスが良くなるかと思いここも修正です。モカ縫いやウェルトについては生成ステッチでお願いし、コバの仕上げもナチュラルに。わがままをたくさん言っても受け入れてもらえる、これもビスポークの醍醐味。
私の仮縫い靴も切り刻まれて責務を果たしたところでフィッティング完了です。完成は次回のトランクショー(2024年春頃)の予定。皆様のオーダー分についてももちろん楽しみですが、記念すべきファーストペルティコーネがどんな仕上がりになるか、仮縫いが素晴らしかっただけに余計に期待してしまいます。なるべく多くの方に見てもらえるように次回トランクショー時も集客頑張らなくっちゃな。
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