マヤ・ルンデ『蜜蜂』

マヤ・ルンデ『蜜蜂』

蜜蜂
クリエーター情報なし
NHK出版

発売日:2018年6月26日
形態:単行本
ページ数:488
オススメ度:★★★★☆

基本的に日本人作家の本の方が好きなのですが、本屋で立ち読みしていたら思わず引き込まれて買ってしまったこの本。想像以上に面白かったのですが、本と関係ないところで私のプライベートが忙しくなってしまって読了までひと月弱もかかってしまいました・・・本来なら初めての星五つを与えてもいいくらいの内容だったのに、なんだか『蜜蜂』には申し訳ないことをしました。

この本は違った時代に生きる三人の主人公の視点で展開されていきます。2098年の中国・タオ、2007年のアメリカ・ジョージ、そして1852年のイングランド・ウィリアム。

ウィリアムの時代に人工巣箱による養蜂が始まり、養蜂場を営むジョージの時代に謎の蜜蜂の大量死が発生し、蜜蜂が絶滅したタオの時代には人類もまた絶滅の淵に立たされているのです。

“蜂群崩壊症候群”と呼ばれる蜜蜂大量死によって、どのように世界が崩壊していくのかが明らかになるのは物語の後半以降で、全般を通して主人公三人の人間としての営み、心の闇、家族や周りの人物たちとの間に生まれるストレスなど、細かい点までよく描かれていました。翻訳の池田真紀子氏も巧いです。洋物独特のとっつきにくさをこの本に関してはあまり感じませんでした。

この本を読むまで恥ずかしながら私は知りませんでしたが、現実に蜂群崩壊症候群という現象は小説の時代設定と同じ時期に発生しており、Webを使ってそれについて調べてみればみるほど、この小説にあるような人類の衰退についてもまた、ただの小説だと片付けられない問題であるような気もしてきて、リアルな恐怖が真に迫ってきます。2090年って、まだ私、骨と皮みたいになりながらかろうじて生きているかもしれないし・・・。

それぞれの時代、苦悩と葛藤ばかりのようにも見えますがそんな中にも希望を見出すことが出来るのが人間の強さ。ネタバレしてしまうともったいないから、ぜひご自身で読んでみてください。きっと今、美味しい蜂蜜が食べられることに感謝したくなります。

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