また行きました、東京。(NaoyaHida新作発表会編)

Watch

またしても東京日記です。飛田さんが2023年モデルとして発表した新作はすでに各メディアで大きな話題を呼んでいますが、この度同ブランドとしては初となる「オーダー開始前に一般のユーザーがNaoya Hidaの新作を手に取って見られる機会」を作ってくれました。わざわざこういう場を設けなくとも、例年Web上の写真で判断して購入を決める顧客からだけでも生産予定数を遥かに上回るオーダー希望が入るほどですから、指を咥えて見ているだけの私からするととても良心的なイベントです。今回は過去にNaoya Hidaの時計を購入したことのある方限定で、同伴者1名までという制限付きでの開催。「これは伺うしかない!」と散々休んだはずの連休明けに早速有給申請をしてもちろん行って参りました。

せっかく同伴者1名までということですから、東京に住まわれていて飛田さんの時計に興味のありそうな方と一緒に・・・と考えた時に、最初に浮かんだのがSHINYAさんでした。私のTYPECを見るたびに「良い時計ですね」「やっぱかっこいいっすね」と言ってくれていたので、お誘いしてみたらとても喜んでくれて。飛田さんのオフィス前で集合し、この日最初の客としていざエレベーターへ。

前回来た時にはビルの4階がオフィス兼アトリエとなっていましたが、4階で降りると今日のイベントは6階でとのことで、もうふたつフロアを上がります。あとで飛田さんに聞いてみたところ「オフィスが手狭になってきたので、イベントやお客様を呼んでプレゼンテーションする場は6階、4階は完全な作業場として分けることにしました」とのことでした。

いつも通り柔和な笑顔で我々を出迎えてくれた飛田さんと、エングレーバーの加納さん、そして時計師の藤田さん。室内には4人掛けのデスクが二つ並んでいます。昨日まではメディア向け、そして時計のサプライヤー向けに同じようにローンチイベントを開催していたようで、同じ時間枠に2組のお客様がお見えになり、3人で手分けをしてプレゼンテーションを行なっていたそうですが、この日私たちが予約した枠は運良くダブりがなく、naoyahidaチームの3名を独り占めできる贅沢な時間でした。目前には新作時計が収められたプレゼンテーションBOXが並び、期待に胸を膨らませます。

飛田さんには事前に「SHINYAというブランドをやっているシンヤさんと伺います」とお伝えしてあったのですが、飛田さんはSHINYAブランドの設立年から商品の特徴まで完全に把握されていました。「オボイストさんのブログでいつも見てますから」と謙遜されていましたが、さすが長くラグジュアリー製品を販売してきたプロフェッショナルだけあって、飛田さんの話法と完璧な事前準備に思わず舌を巻きました。

シンヤさんはこの日オーデマピゲを腕にはめていらっしゃいましたが、さすが飛田さんはひと目見ただけでモデル名はもちろんムーブメントの種類まで把握されていて、お話を聞くと飛田さんがオーデマピゲを担当されていた当時のモデルとのこと。「非常に素晴らしい時計です」と自身の時計の話になる前にしばし盛り上がりました。

今回イベントの枠は一組1時間ということで、早速時計の説明に。まず現れたのは昨年に引き続き製造されることとなったTYPE1〜3のシリーズ。同じモデル名とはいえベルトの種類が変わっていたり、言われてみないと分からないようなアップデートが施されています。

シンヤさんが「やっぱりまずは・・・」と言われるように、Naoya Hidaのマスターピースとしてブランドの顔のような存在になっているTYPE1シリーズの最新モデルD。私は前回訪問した時に自分のモデルとの違いを説明していただきましたが、今回はレザー好きならみんな大好きと言っても過言ではないベイカー社の復刻ロシアンカーフ・ヴォリンカを採用。私がTYPE1Cを購入した時は浅草のガルーシャテイルとジャンルソーのどちらかでしたが、ガルーシャテイルはニューヨークタイムズなどに掲載されてから爆発的人気で今や納期が2年とのことで取引が終了し、今はジャンルソーを含む3つのサプライヤーと契約されているそう。このヴォリンカについては最も迫力のあるアプローチで、今回のラインナップ中個人的には一番好きなベルトでした。

TYPE1Cの時は裏面のみの無反射コーティングが施されていたサファイアガラス。「使っているうちにコーティングが剥がれてくる恐れがある」という理由で裏面のみとなっていたようですが、最近になってクオリティの高いコーティングが可能になったそうで、飛田さんによる1年の実機テストを経て今回製品版にも採用になっています。この写真ではほとんどわからないかもしれませんが、蛍光灯の2本のラインがTYPE1Cにははっきりと映り込むのに対して、TYPE1Dでは映り込みが明らかに軽減されていました。

TYPE1Dを試着されるシンヤさん。「実物を見て、作っている方の話を聞くと、迷いがなくなりますね」と決意が固まった様子。。。やはりシンヤさんがつけるとしたら、ブラックのベルトがお似合いになりそうです。「皆さんベルトにも非常にこだわりが強い方が多いので、ご自身の行きつけのベルト屋さんで思い思いにコーディネートされてますね」と飛田さん。私にとってはSusieSveltがいてくれますが、シンヤさんが飛田さんの時計用に作るベルトもとても興味があります。

憧れのマークチョーさんにお会いしたくて参加したHODINKEEイベント時にも少しマークさんの私物を見せていただきましたが、THE ARMOURYコラボのLettercutterを改めて手に取ってじっくりと見てみます。専用のブルーのカシューが青い秒針と見事に調和しています。私が訪れた時点でTHE ARMOURYでの購入申し込みは終了していましたが、やはりマークさんの影響力も相まって応募数はこちらのモデルが最も多いそう。

そして・・・今回私が最も見たい!と思っていたのがこちら、完全新作のTYPE4Aシリーズです。これまでずっと37mmで作ってこられたコレクションですが、この4Aで初めて36mmのケースが採用されています。飛田さんと藤田さんで「搭載されている機械に対してどこまでケースサイズを詰められるか」と熟考を重ね、理論上は35.5mmまで可能だったそうですが防水性など懸念される事項を考慮された上でこのサイズに落ち着いたそう。もちろん発表された瞬間に私もWebページで写真は拝見しておりましたが、果たしてどの程度その差が実感出来るだろうかと楽しみにしていたのです。

中でも、こちらのTYPE4A-1はブランド初となるダークグレーの文字盤で注目度もNo.1。私が初めて飛田さんにお会いした日、まだTYPE1Bも発表前だった飛田さんから「オボイストさんはどんな時計が欲しいのですか?」と聞かれたとき、私は「黒い文字盤の時計が欲しいです」と答えたのをよく覚えています。単純にチェリーニが手元にあることを踏まえて「次は黒かな」という回答だったわけですが、今回TYPE4A-1を手に取ることができ、勝手に長年の夢が叶ったような感覚になっています笑

DLC加工により表現された絶妙なダークグレー文字盤、オフホワイトのカシューはもちろん加納さんによって手彫りされたインデックスに流し込まれていますが「このサンプルはあまりにも綺麗に仕上がってまるでプリントのように見えますが」と飛田さん。確かに黒い数字と比べるとパッと見た時は手彫りかどうかの判別が難しいくらいの仕上がりです。4A-1にはジャンルソー製のライトブラウンのゴートストラップが標準装備されていますが、ステッチと文字色がマッチしています。鋭利な刃物を思わせる非常に立体的な針に加えて“Fujita’s small cavier spoon”と命名された秒針はまるでダイヤが入ったかのようにキラキラと輝いて見えます。ニューヨークのTHE ARMOURYにて開催されたトランクショー時に、4A-1を手に取ったカスタマーが「まるでキャビアスプーンのようだ」と感嘆されたことがきっかけで正式名として採用されたというストーリーがまた面白い。

「このモデルのために特注で製作した」という丸みのある風防も、その他のモデルには見られない特徴です。小ぶりなケースサイズでありながら、適度な厚みとこのガラスのおかげで全く物足りなさを感じません。

腕につけてみると、想像していた以上に1mmのケースサイズ差は大きくて。最近クロノトウキョウの34mmをよく着けているので、余計に36mmというこのサイズ感は装着していてしっくりきます。飛田さん曰く「世界的には39〜40mmくらいの時計が今のスタンダードですから、その感覚はかなり重症ですよ」と言われてしまいましたが。私は肩幅がラガーマン並みな割に腕は15.5cmと比較的細めなので、やはりこのくらいの時計が一番しっくりきます。

特筆すべきもう一つの大きなポイントは、今回TYPE4に関しては専用に開発されたDバックルを選択出来ること。贅沢にもずらっと準備されたサイズゲージを使って、直接お会いしてサイズの確かめられるお客様限定にはなるようですが、自身の腕にばっちり合うベルトを納品時から楽しむことが出来ます。

この日東京で見るまでは、正直なことを言うと私は完全にピンバックル派だったのですが、飛田さんのDバックルは圧倒的な作り込みでした。一般的なDバックルと比べて明らかに控えめで薄いNaoya Hidaオリジナル設計のこちら、腕に沿うように工夫されていて付け心地も非常に快適。ピンバックルとの価格差を考えても確かに選ぶ価値のある選択肢だと考えを改めました。時計本体側はもちろんのこと、バックル側にもイージークリック機構が搭載されていて、2.5mm間隔で3つ並んだ調整穴を使って自分で簡単に装着感を変更することが出来ます。夏場など暑い時期には緩くするなど、これは嬉しい工夫です。

ダークグレーの4A-1はもちろん素晴らしかったのですが、ジャーマンシルバーの4Aは写真で見るよりもより一層素晴らしいデザインでした。これは手に取って見てみないと魅力が伝わらないかも。

傾斜と高さのあるインナーベゼルの立体感が、ダークグレー文字盤と比べるとより視覚的に効いていて、いろんな角度から見た時に豊かな表情を見せてくれるのが4Aかなと。TYPE1Cを持っている私が増やすならやはり4A-1ですが、初めてのNaoya Hidaとして一本選べと言われたらこれはかなり迷うのでは?

こちらも試着させていただきました。上の写真と比べると、文字盤の奥行き感が違って見えるのではないでしょうか。やはりケースサイズを含めて非常に魅力的なモデルです。

藤田さんや加納さん、もちろん飛田さんにも、オボイストウォッチストラップを装着したTYPE1Cを見ていただきました。「思ったより柔らかい!面白いですね〜!」と、時計を作っているチームの皆さんからも太鼓判を押してもらえて、コラボ冥利に尽きる嬉しいお言葉をたくさんいただきました。ゴールドコンビケースのTYPE1D-1や、試作機としてのTYPE1C、そしてTYPE1Dとそれぞれで絶妙に文字のエングレービングも変更されていて、並べてみるとより違いが解りやすいです。

わーきゃーと盛り上がっているとあっという間に1時間が経過してしまって、12時ちょうどに次のお客様もお見えになったのでここで退室。東京旅行記は帰りの新幹線で全部まとめようと思っていたのに、飛田さんイベントのあまりの素晴らしさにこの記事だけで大ボリュームになってしまいました。ぶっちゃけチェリーニが高く売れるなら私も4A-1に応募したいくらいですが・・・読者の皆様の健闘を祈ります。東京旅行記はまだまだ続きますが、一旦ここで区切りとします。飛田さん、藤田さん、加納さん、この度はお忙しい中素晴らしいお時間をありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました