タクシーで到着後、NH WATCHのオフィスの入るビルのエレベーターで四階へ。名古屋市内のレストラン、御殿場アウトレット、神戸の名時計店カミネ、納品時Sewnにもご一緒した豊橋市内・・・飛田さんとお会いするのは今回5回目になります。納品が2020年12月でしたからちょうど2年振りですが、時計について、おすすめの書籍についてなど色々と連絡を取り合っているのでそんなに久しぶりな感じがしません。大変お忙しい中でも、いつも変わらず丁寧にご対応いただける飛田さんは、ご自身が作り上げた時計以上に私にとって憧れの存在なのです。
4階を降りてオフィスのインターホンを鳴らすと間もなく「ようこそ~」と飛田さんが笑顔で迎え入れてくれました。扉の先では飛田さんの他に、Naoya Hidaチームのお二人、時計師の藤田耕介さん、彫金師の加納圭介さんもいて名刺交換を。本業の名刺を忘れてきてしまったので私はオボイスト名刺でご挨拶。飛田さん曰く「3人の中では○○(私の本名)さんは何故かひらがな表記で通ってるんですよ」とのことで、藤田さんと加納さんも私のことを認知してくれていることが分かり嬉しくなりました。お二人からも「いつもブログインスタ拝見してます」「毎朝コーディネートの撮影されているのはご自宅ですか?」などとしばし歓談。想像していたよりも広く清潔感漂うオフィス。
あらかじめ飛田さんが手配してくれていたランチのご予約まで30分ほどでしたので、オフィス内を詳しくご紹介いただくのはランチ後にして、飛田さんとある程度の近況報告が完了した時点で近くのビストロへ移動。近くでしたがとても寒い日でしたので、一度脱いだコヒーレンスのコートに再び袖を通すと「私の持っているTHE ARMOURY別注モデルMarcと比べると、オボイストさんのモデルはよりクラシカルなシルエットですね」と飛田さんからコメントをいただきました。(飛田さんの素敵なコヒーレンスのコートについては納品時の記事を参考されたし)
霧のような小雨が降る中を歩いてランチのお店へ。飛田さんとも話していたのですが、ちょっとした雨の中傘を差さずにトレンチコートで歩くのってなんかちょっと格好良いかなって思ってます。ちなみにこの日飛田さんは、きっと私がイベントをしていたことを考えてのことだと思いますが、RENDOでオーダーされたというコンビローファーを淡い色のジーンズに合わせ、ヴィンテージのAnderson&Sheppard製のダブルブレザーを着ておみえでした。私もFumiya HidanoのダブルブレザーにANSNAMのデニムでしたから「ブリティッシュなブレザーにジーンズを合わせて、おそろいですね」と二人で話していました。
この日のために予約してくれていたのは古民家を改築したフレンチのお店で、今回は二階の席に案内してもらいました。少し急な階段で、藤田さんや加納さんも「夜に来て飲みすぎたときは転げ落ちないように気を付けないと、納期がさらに延びちゃう」と冗談を言い合って笑っていました。オフィスについた瞬間から感じたことですが、2013年頃から共に時計作りを続けている3人はお互いを常に尊重し、信頼し合っていることが伝わってきました。F.P.ジュルヌやセイコーで修理担当者として働いていた藤田さんや、ティファニーの彫金師として働いていたバックグラウンドを持つ加納さんも相当な経験の持ち主ですが、圧倒的なキャリアと知識量をお持ちで最年長の飛田さんがチームのお二人のことを毎回「藤田さん」「加納さん」と呼ばれている姿が特に印象的でした。
店員さんからコース料理の説明を受け、それぞれに注文していきます。Naoya Hidaチームの中では一番最後に顔が明かされた彫金師の加納さん、首元のボウタイは飛田さんからのプレゼントだそうです。
「自分達は裏方で目立たないようにしてようと思ったのですが、飛田さんが“これからは作り手の顔が見えることが大切です”とおっしゃるので」と控えめな藤田さん。飛田さんの言葉には私も全く同感です。実際にこの日の経験から自分のTYPE1Cへの愛着は何倍にも膨れ上がりましたから。
私の本業の話なども交えつつ、素材の味を大切にした創作フレンチに舌鼓。飛田さんも「ここは初めて来ましたが美味しいですね、今後通ってしまいそうです」と絶賛でした。Naoya Hida&Co.としての今後の展望や、私がこれからどんな道を進んでいきたいのかなどの人生相談なんかも話題にのぼりましたが、飛田さんがお二人を正式な社員として迎える際のお話には特に胸を打たれました。
ランチ後はオフィスに戻り、いよいよ時計の詳しい解説や藤田さん、加納さんの作業風景を見学させていただくことに。私がTYPE1Cの注文をする際にTYPE2Aは拝見しておりましたが、最近のモデルはまだ一度も手に取ってみたことがありません。Naoya Hidaの時計は会社として持っているサンプル以外は実際に購入した・・・というよりも、幸運にも購入できた方のものを見せてもらうくらいしか手がなく、全部並べて見せてもらえるなんて大変貴重な機会です。
まずは私も保有するTYPE1シリーズから。TYPE1A、B、Cに関しては見たことがありましたが改めて飛田さんから詳しく説明してもらいながらチェック。サンプルのTYPE1Bは文字盤外周の目盛部分が経年で変色しており、経年変化のサンプルとしてもこのままにしているそう。「1Bを製造した時と比べると洗浄技術も向上していますので、今のモデルは変色するまでの時間はもっと長くなっています」と飛田さん。オーバーホール依頼時に希望すれば最初の状態のように洗浄することも出来るそうで、私のTYPE1Cはどうしようかななどと考えながら愛でるのもまた楽しいのです。スクリューバックが採用されたTYPE1D、K18イエローゴールドコンビのTYPE1D-1も試着させていただきました。写真で見ていたはずなのに気づいていなかったのですが、DとD-1ではスモールセコンドの針の形状が変わっていて「イエローゴールドならバーよりもリーフハンドが良いかなと」と細かいポイントまで拘り尽くす飛田さんに脱帽。
お次はTYPE2シリーズ。TYPE1Cを購入する際に拝見した2Aと昨年のモデル2B、ベゼルの形状やリューズのデザイン、文字盤までTYPE1シリーズと比べると変化が大きいように感じます。中でも心を奪われたのは最新作TYPE2Cで、文字盤外周のレールウェイ型(地図記号の線路のようなデザイン)の目盛、2Bと比べると少し小さめに調整された文字サイズ、是非ともオボイストブリーフケースと合わせて使いたいグリーンゴートレザーのストラップ等、実物を見れば見るほど“良い”と感じる時計でした。Naoya Hida各モデルはケースの厚みはTYPE1が9.8mm、TYPE2,3は10.8mmなのですが、TYPE2は表側を薄く、裏側はセンターセコンド機構の関係で厚くなっているそうです。表側が薄いと不思議とより薄い時計に見えるものですね、てっきり2の方が薄く、3の方が厚いものだと思い込んでいました。
最後はムーンフェイズ搭載モデルのTYPE3Aと3Bです。予約開始時にはTYPE1とTYPE3には特に多くの応募が入るそうですが、TYPE2とは逆に表側を厚く、裏側を薄く作られたTYPE3は腕に着けても立体的な押し出し感を楽しむことが出来ます。アルカンターラ製のストラップはスエードレザーと比べても摩擦にも強く柔らかな着け心地で飛田さん自身も気に入っているそう。彫りの深いローマインデックスも魅力的です。ちょっと長くなってきたので、Naoya Hidaオフィス探訪記後編については⑦でまとめます。
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