人生最高のKOKON【前編】

Shoes

「KOKONが2月決算なのですが、宜しければ1月か2月に“蔵出し会”のようなものをやらせていただけませんか?」と小紺さんから連絡があったのは2024年11月1日のことです。昨年7月にTTBOで開催したKOKON初のトランクショーは「ご実家のある輪島が震災の被害に遭われた小紺さんを応援したい!」という私からの熱烈なオファーから開催が決定しましたが、今回は小紺さんから連絡がありました。この連絡で“ああ、本当に心から喜んでくれていたのだな”と私は感じて、もちろん協力させてくださいとお返事を送りました。

ただ、その時点で既に1月にはWhenとのトランクショーが決定しており、順番的にまずWhenとのコラボレーションシューズであるWALESを成功させてからでないと、小林さんに対しての筋が通らないと思いKOKONトランクショーの発表はWhenトランクショー終了後になりました。おかげ様でWALESは大変ご好評いただいており、トランクショーが終わってからの現在でも東京のアトリエを訪ねてオーダーしてくれるお客様などがいらっしゃる状況です。昨年から靴のイベントが続いていることもあり、小紺さんには「前回のような足数が販売できるかは正直不安なところもありますが、それでも良かったら全力で頑張ります」と返事をしたのですが、小紺さんからはそんなこと特段意に介さない様子で「ありがとうございます、2月のご都合の良い日によろしくお願いします」と穏やかな返信がありました。

しかし、私の心配は杞憂に終わりました。予約サイトを公開した途端、ポンポンと予約が入るのです。やはり前回の様子についてもブログでご紹介していましたから、お客様にとってみれば想像がしやすく来店のハードルが下がったのかもしれません。最初は1件予約が入るたびに小紺さんにお伝えしていたのですが、そのうちに追いつかなくなり私は事前に予約者の足のサイズと希望されるモデルや革の種類についてなどをエクセルの表にまとめて、小紺さんと共有することにしました。

金沢KOKONやグロスターロードでも年明け以降セールのイベントが開催されていて、ブログを拝見している限りかなりの足数が出ているように見えました。「2月末にTTBOでトランクショーをするときに、ちゃんと良い在庫が残っているのかな」とここでも私は少し心配をしていました。段々とトランクショーの日程が近づいて来るにつれて、ご予約いただいたお客様たちに喜んでいただけるのかということで頭の中がいっぱいになっていきます。私もようやく店のオーナーらしい思考になってきたということでしょうか。そうして、私が指定したトランクショー2日前の夜に、KOKONから今回販売する分の在庫靴が到着しました。

・・・なんだこれは、多過ぎるだろ・・・」と、到着した荷物を見て私は言葉を失いました。積み上げると部屋の天井まで届きそうな壁が出来上がってしまうくらい大量の在庫靴。お客様にはもちろんイベント当日になってからのお楽しみですが、私はその日のうちに全ての箱を開けて靴を取り出し、チェックしました。ここでまた絶句するのです。「やばい靴多すぎだろ」と。

明らかに前回のトランクショー時とは様子の違う靴のラインナップです。第一回トランクショーの時は、KOKONさんにとっても初めてのことでひとまず様子見という面もあったのかもしれません。結果的に予約なしでご来店されたお客様にハマる靴が続出したのが前回でしたが、実は直前まで事前予約は2件しか獲得することが出来ず、お二人のお客様向けに絞って在庫を郵送してもらっていたことも当然あるかと思いますが。それが今回は、文字通り“全身全霊”といった内容のお宝たちがこれでもかというほど送られてきていました。

全ての靴に既に大興奮が止まらない店主ですが、届いたその日にはなんとか会場のセッティングを完了させました。これはもう、ご満足いただけるに違いありませんが、ただの満足では最高の店とは言えないのです。小紺さんと一緒に、お客様を感動させることができて、初めてこの店の存在価値があるのだと自分を奮い立たせました。トランクショー前日、aldexからは、オーダーしていた初めてのTTBO3ピーススーツが届きました。これも元々、トランクショー終了後の完成予定だったものを、気を利かせて岩田さんがギリギリ間に合うようにしてくれたものです。KOKONトランクショーは今回も2daysでしたが、初日は相変わらず大好評をいただいているTTBOSUITのオーダー会も予定していました。

結局前日までの予約分だけでもご来客予定数は20件近くになっていました。前回以上の忙しさになることはもう確実ですので、気合いを入れて朝早くTTBOに入りました。12homemadeの別注クラウンパント、出来たばかりのアルベニ別注ニットタイ、マルヤスのオーダーシャツ、そしてシスルヴィンテージの3ピースです。表に出した全体の2割ほどの靴と、店内の各所に隠したお宝。KOKONのトランクショーは通常のオーダーイベントとはまた違ったワクワク感があります。

今回は2月末なので、もしかしたらもう暖かくなっているかもと思っていましたが、その反対で全国的に厳しい寒波が到来しているタイミングでした。小紺さんは金沢からTTBOへ車で来られますから、大丈夫だろうかと心配していたのですが、予定時刻より少し早いくらいに無事TTBOへ辿り着かれました。この日は10:00オープン予定だったのですが、最初のお客様のご都合に合わせてTTBOSUIT受注会のみ9時から開始していました。朝から16時過ぎ頃まではTTBOSUITオーダー会の予約が隙間なく埋まっていて、私は奥の部屋に缶詰めで岩田さんと採寸データを取りまくりました。本当に忙しくて、写真を撮る余裕すらありません。

お一人目の採寸をしているときに、小紺さんがTTBOへやってきました。ペンドルトンの暖かそうなコートに身を包み、まだクレマチス銀座が高野さんと小松さんお二人の時代のバッグを手に持っていました。小紺さんが持っているだけで全てが特別なものに見えてしまうのは、私が重度のKOKONファンだからでしょうか笑 私はというとつい最近、Ortusの小松さんの師匠にあたるFugeeのバッグが出来上がったところ。一番最初にFugeeを訪問して名刺入れを購入する前に、実はOrtusへも寄らせていただいたことがあります。エレファントのブリーフケースの迫力が今でも忘れられないのですが、Fugeeの名刺入れ購入を考えているとお伝えすると「親方のやつ、良いと思いますよ」と背中を押してくれたことを思い出します。

小紺さんにもFugeeのバッグを見せたところ「やっぱり、良いねえ。昔、高野を連れてレザーフェアの会場を歩いていたときに、向こうから小松君を連れた藤井さんが歩いてきて、ばったり会ったことがあるんですよ」と思い出話を聞かせていただきました。私の大尊敬する二人が、それぞれの愛弟子を引き連れて同じ場所で出くわすなんて、想像するだけでも、まるで映画のワンシーンのようです。

今回はその名の通りの“決算セール”ですから、本当に考えられないほどお値打ちな価格でKOKONの宝物靴が手に入ります。最初のお客様もスーツだけの予定が、結局気がついたらKOKONの靴も買っていただいていました。私がスーツのオーダーを取り続けているうちに、あれよあれよという間にKOKONの在庫が消えていきます。私は前日朝5時に起きて、私の足に合いそうな全ての在庫を会社へ行く前に試着していました。それなのに、目星をつけておいた靴から、お客様に見そめられて旅立ってしまうのです。初めてKOKONを買われるお客様から、既にKOKONを何足もお持ちのお客様まで様々でしたが、KOKONを履いてくださる人が増えるのは私にとっても非常に嬉しいことである一方で「ああ〜また売れてしまった〜泣」と心の中では泣いていました笑

中には、関東から夜行バスに乗ってわざわざこのイベントのために愛知に来てくれた若い女性のお客様も。ネイビーの金ボタンブレザーを羽織ってみえて、クラシックなスタイルがお好きなようです。4cmヒールのついたリーガルプレミアムラインのフルブローグシューズを履いていらっしゃいました。もちろん小紺さんには先に足のサイズやお好みを伝えていたため、表には出していなかったこちらのお客様に向けたおすすめ靴を出してきてもらいます。

それがこの、ベルギーライン(アンビオリクス社製)のKOKONの2足です。ワイドなパンツに合わせているため少ししか見えませんが、外羽根の柔らかいシボ革を使ったグッドイヤー製ウィングチップと、ライトブラウンのマッケイ製ローファーです。初KOKONのお客様でしたので、我々もお足にフィットするか不安だったのですが、バッチリ過ぎるくらいにハマっています。まだお若いし予算も限られているだろうに、最終的には履き心地に感動されて、2足ともお持ち帰りいただきました。

TTBOを始める以前によくSewnとのイベントへ来てくれていたI様とも、久しぶりに再会を果たしました。「是非小紺さんに会いに来てください!」と私がお誘いしたのですが、元気そうな顔が見られて私自身も嬉しくなりました。

イギリス軍のナンバー2ドレスパンツを穿いてのご来店だったので「私も最近お客様に教えてもらって、全く同じもの穿いています」と盛り上がることが出来ました。色々ご試着いただいた結果、I様にはKO-11ラストを作るときの試作靴の一つをお選びいただきました。ウェストのくびれからフロントのチゼルトゥまでの迫力あるシルエットが魅力的で、この日の装いにもあまりにハマりすぎていました。

小紺さんに事前に送ってあった予約リストには、お客様のお名前と、ご希望の革やモデルについて言及のあった方についてはそれもお伝えしていましたが、小紺さんはそれをじっくりと読み込まれて何を提案しようかと思案しメモでびっしりになった紙を当日持参されていました。そうして持ってこられた靴たちが、見事にお客様のキャラクターや装いにマッチしていく様は、なんだか「実は小紺さんは、人智を超えた不思議な力でも持っているのではないか?」と思わされれるほどです。

当店の常連であるさとしさんは、4着目にオーダーいただいたシルクカシミアのジャケットを受け取りにご来店されたのですが、こちらの迫力あるモカ縫い靴を小紺さんに提案されて完全に心を奪われたようです。Uチップは他にも手持ちがたくさんあるはずなのに、結局こちらのご購入を決意。初KOKONを存分に体感出来るハンドメイドラインの一足です。

さとしさんもインスタにアップされていましたが「履くとシュッと見える」というのはKOKONの特徴だと思います。置いてある状態で格好良くても履くとイマイチな靴はたくさん見てきましたが、逆パターンの靴は意外と少ないような気がします。一見すると、悪くいうと地味に見えがちなKOKONの靴。まだ足を入れたことがないという方がいたら、是非金沢KOKONを訪問してご試着だけでもされてみることをおすすめいたします。

前回コードバンのウィングチップをご購入いただいたお客様も、同じく当店でお仕立てしたTTBOSUITに合わせて履いて来てくれました。大切に履いてくれているのが伝わってくるエイジングで、こちらまで嬉しくなってしまいます。

KO-4を使用したレーデルオガワ製のダークブラウンコードバンの1足をご試着いただきました。定番のKO-1の靴と比べると、ディンケラッカーを彷彿とさせるようなどっしりとしたボリューム感があります。最近、別のビスポーク靴が納品されたばかりということもあり今回は購入は見合わせられましたが、その日の夜に「たくさん歩いても全く靴擦れが起きず、KOKONの靴に感動しています。小紺さんの型の追求スタイルに感銘を受けていますので、また欲しくなると思います」と連絡がありました。まさにおっしゃる通りで、KOKONの快適な履き心地に慣れてしまうと、もう取り返しがつかないことになってしまうのです(私のように)。ぜひ今後ともKOKONファンでいてくれたらと願っています。

久々にTTBOへ来てくれたおかてつさんは、みんなの写真を撮りつつ今回はコワテブの馬毛を買ってくれました。KOKONといえばこのブラシというイメージがありますが、現在残っている在庫がなくなり次第終了となるそうです。漆を塗った生地が手に吸い付くような使い心地で、私も愛用していますがアンティーク家具ともよくマッチし、大変気に入っています。おかてつさんだけでなく、今回はブラシだけという方や、靴と一緒にブラシを購入されるお客様も続出しました。TTBOトランクショーでかなり在庫が減ってしまったと思いますので、もしご希望される方は急いで小紺さんに連絡された方が良いですよ!

さてさて、とまあ皆様に良い靴をたくさん買っていただいた後、夕方頃になってようやく少し時間が取れたので、お客様もいる中でしたが「そろそろ僕も買い物して良いですか・・・笑」と自分の靴をどうしようかと考え始めた途端、小紺さんが「オボさん、ちょっと待ってて」と部屋の奥の方に消えていきました。一体何が起きるのかと思いましたが、この後の感動の展開はその場にいた誰にも想像だに出来ませんでした。ちょっと長くなって来たので、私の「人生最高のKOKON」についてと二日目については、次回のブログでご紹介したいと思います。

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